恋のお試し期間
「慶吾さん明らかに何時もと違う…このままで大丈夫かなぁ」
その理由はたぶんあの人がいるからだ。そしてそれを里真が気にするから。
自分がもっと前に出て遠慮して言えばよかったか。
でも何て言えばよかったんだろう。
あんな満面の笑みで一緒に食事しようとさそってくれた美穂子に。
きっと彼女なりに気遣ってくれたに違いない。
ハッキリと何をするわけでもないのに佐伯と矢田がどことなく険悪な
空気を出しているなんて気づいて無さそう。
着替えを兼ねてホテルのシャワールームへ入った里真は1人悩んでいた。
こんな状況で彼にお泊りしましょうなんていえない。
というか、何時もは何をしたって笑顔なのに。あんな雰囲気を出すんだ。
「里真さん」
「あ。美穂子さん」
悩みこんでいても仕方ないとシャワーを止めて脱衣所へ戻ったら美穂子
同じタイミングで出てきたらしい。彼女の裸体はついジッと見てしまうほど綺麗。
すっぴんもほぼ変わらず綺麗ときたらやはり矢田さんには勿体無い人。
と心の中で思う。で、自分のたるんだ体が恥かしくなって急いで服を着た。
「誠人とオーナーさん…佐伯さんだっけ。知り合い?何か知ってる?」
「よく分からないんですけど。それっぽい…ですよね」
「貴方には話してるかと思ったんだけど。そっか。知らないんだ」
「はい。美穂子さんにも?」
「誠人って昔の話しってしてくれないんだよね。貴方とは幼馴染なんだっけ?」
「いえ。会社が同期ってだけで」
「でも年も一緒だし近所…じゃなかった?」
「そう、なんですけど」
そういえば接点はあるはずなのに不思議と一緒に遊んだ記憶はない。
あの人と一緒だったなら記憶に残りそうなものだけど、
彼と何かと話をするようになったのは会社に入ってからだ。
同い年で割りと近くに住んでいるというのもそれから知ったことで。
「そっか。なら、いいんだけど」
「え?」
「ううん。さあさあ準備しなきゃ女はこれだからって誠人に怒られるわよ」
「確かに煩そうですね」
「煩い煩い。女の事なんて全然分かってないんだから」
一端その話は置いといて髪を乾かし化粧をしなおして夜に備える。
同じタイミングということは彼らも一緒だったりするのだろうか。
喧嘩なんてしないと思うけれど、ちょっと不安だったりして。
なんでそんな険悪になるのか里真にも美穂子にも分からないけれど。