恋のお試し期間
「慶吾さんは花束が似合うって思ったんです。やっぱり似合う。よかった」
「そう?嬉しいな。これは家に飾りたいから水につけてくるね」
「はい」
「そこの席に座って待ってて。すぐコーヒー持ってくるから」
嬉しそうに花束を厨房へと持っていく佐伯。
そんな彼を眺めながら嬉しくて笑みがこぼれる里真。
すぐにコーヒーとクッキーが出てきて佐伯も席につく。
手を握られて見つめられて目が合うと微笑まれて。
「慶吾さん恥かしい」
「どうして?…俺はただ可愛い里真を見てるだけだよ」
「もう」
「嫌じゃないよね。だって笑ってる」
「ふふ」
「それとも何かいい事あった?」
「そういう訳じゃ。あ。でも、仕事がちょっと楽しくなったかな」
「へえ。何かそう思う事があったわけだ」
「辛い事ばっかりじゃなくてちゃんと楽しい事もあるんだなって」
「…楽しい事、か」
「あ。そうだデートで観る映画なんですけど。私推理物がいいです」
「わかった。借りてくるね」
握っていた里真の手にキスして返事した。
「…ん…っ」
けれど、その後家に帰る彼女を見送るフリして抱き寄せちゃんと唇にキスする。
「…里真」
「……慶吾さん」
「可愛いよ里真。少し感じてるの?」
「意地悪しないで」
「もう少しだけさせて。少し」
「…ん」
少しといいながらも存分にキスをしてから彼女を離した。
頬を赤らめ目を潤ませる里真を返したくはなかったけれど。
連日の仕事で疲れている様子だったから。渋々。
休日は映画を観て彼女の為にのんびりと過ごそうと約束した。
「ほら裕樹」
「なに?サボテン?」
「あげる。あんたにいいと思って」
「いや、意味わかんないから。いらないよサボテンなんか」
「ここがいいか。じゃ」
「だから勝手に置いて行くな!」
「だって。昔からこういうのあんたのが育てるの上手いじゃない」
「散々姉貴に押し付けられたらそりゃコツだって掴むよ」
「あはは」
「……ほんと暢気だな。俺あんな頑張ったのに」
「え?」
「何でもない。つかさっさと部屋から出て行け!」