好きだった人が死んじゃった。
プロローグ
プロローグ
トンネルを抜けると見慣れない海が広がる。
湘南の海とは違って、商売の色がなくて、
とても遊泳もできそうになくて
水の色と向こう岸の松の緑が濃くて、でも砂浜は白くて。
荘厳な海に3月の昼間の日差しはどこか平和ぼけしていて白っちゃけている。
神奈川は楽しかった。
小学生まであった箱根の保養所に家族で行く途中の海も、
夏の海水浴のナンパ待ちも、
そして、江ノ島の上から見た夜景も。
あの人が居なくなったなんて、
まだ信じられなくて。
振り回されたあの日々は、何時でも思い出すたび昨日のことのようで。
何があったわけでもない。
だからこそ、なんでわたしに会い続けてくれていたのか。
今やもう、聞くこともできないのかな。