熱愛には程遠い、けど。

05 この気持ちはまるで

 ランチとデザートまでしっかりと食べて店を出た。
「ごちそうさまでした」
「ううん」
 会社までは徒歩五分程度。その短い道のりをゆっくりと歩く。
 店に向かうまでとはまるで違う、心が軽い。
 ふと前方から歩いてくる母親とまだ小さい男の子を連れた親子が目に入った。駄々をこね大泣きする男の子をお母さんが人目を気にしながら申し訳なさそうにして手を引いて歩いている。
「大変そうだなぁ。お母さんってすごいよね」
 同情と感心。宮下さんにも同じ光景が目についていたようだ。
「宮下さん子供好きですか?」
「えー……子供? どっちかというと……苦手かな。うん、好きじゃない。なんか……攻撃的だし。結構痛いよ?」
「そんな子ばかりじゃないですよぉ。ふふ、いったいどんな目に遭わされたんですか?」
 私は特に何も考えず、ふと思い浮かんだことを口に出した。
「宮下さん子供の相手上手そうな感じしますよ。優しいし、なんか、いいお父さんになれそうというか。すごい想像できる」
 一人で想像を膨らませること数秒、はっとして隣を見上げると、宮下さんの頬が赤くなってた。
「ご、ごめんなさい。私、めちゃくちゃ失礼なことを……! というか、馴れ馴れしい!?」
「い、いや、いいんだけど……すごく恥ずかしい。古川さん、僕の気持ちを揺さぶってどうするつもりなのかな……」
「どうもしませんよ!」
「はははっ!」
 宮下さんが最後笑ってくれてさらっと流れたけど……私、ほんと何言ってるんだろう。恥ずかしすぎる。

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