熱愛には程遠い、けど。
 その日の夜、私はテーブルに置いた携帯電話をじっと見つめながら正座をして座っていた。今日は会いに行くのなら連絡を入れてからにしようと思っているからだ。
 宮下さんの励ましで落ち込んだ気持ちは復活した。今なら堂々と雅史さんに会いに行ける。でも……会いに行く理由を見失いつつある。
 一つは、昨日一緒にいた女性のことについて聞くこと。そしてもう一つ、一番、大事なこと。
 プロポーズの返事だ。
 一度は結婚を決意したはずなのに……日に日に気持ちが薄れていっている。なぜなんだろう。待てば、気持ちはまた結婚に向かうの? 会えばすべてが解決する?
 とにかく今はこんな気持ちのまま雅史さんに会いにいくわけにはいかない。私はこの日は会いにいくことをやめた。

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