熱愛には程遠い、けど。

「一名追加になったから……って……」
　宮下さんだった。宮下さんは驚きに目を見張ると慌てて頭を下げて給湯室の扉を閉めた。
　堪らず私は彼を追おうとしたけど、雅史さんが私の腕を掴んで制止した。
「離して……おねがい……！」
「杏奈……」
「ごめんなさい、ごめんなさい！」
　雅史さんの見上げる私の目には涙がうっすらとたまって、思いが通じたのか雅史さんは視線を落とし「ごめんな」と呟いた。そして私の腕を掴む手の力が緩んでいく。あと少しで離れる、その時だった。
　再び給湯室の扉が開いて、宮下さんが入ってきた。
　そして私と雅史さんの前に立つと、すでに緩み切ってる雅史さんの手を払いのけるように私の腕を取るとそのまま引いて給湯室を出た。
　何が起きたの……？　どうして宮下さんが私の腕を引いてるの？
　混乱したまま宮下さんに連れられて、気づいたら何度か宮下さんにお願いされて作業をしたことのある資料保管室にいた。