Beautiful Life ?
第一章:ニューヨークの恋

01話

 自由の身になって初旅行の場所にと選んだ場所は自由の国アメリカ。
 フェリーに乗って真っ先に向かったのはニューヨークのシンボル自由の女神。
 引きちぎられた鎖と足かせを女神が踏みつけている。
 自由の象徴! 今の私と一緒だわ!
 絵里は女神を眺めながら喜びを噛みしめた。
 早々と帰りのフェリーに乗り込み、小さくなっていく女神を見つめながら高まる期待を胸に次の目的地に向かう。
 ショッピング天国の5番街や最新ファッションが集まるソーホーでショッピングをして、夕暮れ時にはマンハッタンに高くそびえ建つエンパイア・ステート・ビルの展望台から素晴らしい景色を見下ろしてこれからの人生に期待を膨らませる。
 夜は眠らない街タイムズスクエアで慰謝料をぱーっと使って……

「運転手さん、ホテルに向かってくれないかしら。場所は……」

 タクシーをつかまえて行き先を告げる。
 次の目的地に行く前に、ホテルにチェックインして荷物を置いてこようと思ったからだ。荷物が邪魔で仕方がなかった。

「お客さん一人?」
「えぇ、そうよ」
「一人でそのホテルに泊まるのかい?」
「なにか問題でも?」
「そのホテル、つい先日銃の乱射事件があって警官隊が……」

 眠れればいいやと予約した格安ホテル。ケチらない方がよかったかしらと少しの後悔。

「この間警察が入ったばかりなんでしょう? ならしばらく大丈夫よ」
「はは、お姉さん度胸あるねぇ」

 失うものなんて何もない、危険すら楽しんでみせる。今の自分は無敵だ。絵里は胸を張り笑って見せた。
 目的のホテルの前に着きタクシーを降りた瞬間、目の前をすごい勢いで三台のパトカーがサイレンを鳴らして走り去って行った。

「あれ? お客さん降りないのかい?」

 絵里はそおっと再びタクシーに乗り込んでいた。

「え、えぇ。ノドが乾いたからカフェにでも行こうかと思って……イーストビレッジに向かってくれない?」
 せっかく自由の身になれたのだから命は惜しい。絵里は宿泊予定だったホテルを諦めた。

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