Beautiful Life ?

05話

　ワインが注がれたグラスを受け取って口に含む。
　一人で外国に来て、誰かと酒が飲めるとは思っていなかった絵里は喜びに頬を緩めた。

「一人で外国に来るなんて度胸あるよな。あ、でも英語も堪能のようだしもしかしてよく来てる？」
「ううん、一人の海外旅行ははじめて。でも実はね、こう見えて結婚前はCAで色々な国を飛び回ってたのよ」
「なるほど。家族は？　一人で一週間も旅行に来れるなんて心の広い家族だな」
「いないわ」
「いない？　今結婚って……」
「一週間前に離婚したばかりなの。子供はいない」

　絵里は堂々と涼しい顔で言い放つとワインをもう一口飲んで笑顔を見せた。

「そっか」
「あれー？　何も聞かないんだ？　興味ない？」
「はは。そんなに明るく話されたら興味も何も……吹っ切れてるっていうのが分かるし、わざわざ過去の終わった話を聞く気にもなれないかな」
「その通り。今の私、前しか向いてないもの。最悪な結婚生活を終えて気づいたら33になっちゃってた。無駄に過ごした二十代は返ってこないけど、まだまだこれから。第二の人生、精一杯楽しんでみせるわ！」

　明るい笑顔を見せる絵里を見つめて、辻合もつられるように微笑んだ。

「前向きなんだな。嫌いじゃない」
「あれ？　もしかして好きになっちゃった？」
「は？　もう酔ってるのか？」
「あはは」

　二人の笑い声がリビングに響く。
　まだ少量しか飲んでいないのに、絵里はもう酒がまわったかのように気分が高揚して楽しい気分だった。ふわふわとした不思議な気持ち。絵里は今の変に興奮した気持ちは、異国の地に来て一日目だと言う気持ちの高まりとお酒のせいだと思っていた。