Beautiful Life ?
「明日からはどうするんだ?」
「宿くらい自分で探せるわ。子供じゃないもの」
「今日はどうするつもりだったんだ?」
「えーっと……実は、泊まる予定だったホテルがね、安いホテル選んじゃってたから……ちょっとヤバイホテルだったの」
「銃撃戦?」
「……まぁ、近いかな」
「なんだ、リアの作り話もあながちウソじゃないってことか」
「はは、本当だ……」

 絵里は部屋を見渡して「それにしても素敵な家ね」と言った。
 内装もインテリアも細部までこだわりが見えるセンスのいい部屋だ。

「ここは会社が出してくれるんだ。家具も照明などのインテリアも最初からついてた」
「部屋中に飾ってあるお花は?」
「リアが。亡くなった妻が花が好きだったんだ」
「奥さん、とても綺麗な人ね」

 辻合は瞳を伏せ静かに微笑んだ。せっかくの楽しい雰囲気を壊したくない。絵里は沈黙を避けたくて話を変えた。

「それにしても。本当に一晩タダで泊めてもらっちゃっていいの? お金なら払うし……何か困ってることない? 家事とか。私が出来ることならなんでも」
「別にいいよ。リアの話相手になってやってくれれば。多感な年ごろの娘の相手は俺では難しくて。一番、母親が必要な時期にリアは母親がいないから。あ、別に君に母親の代わりをしてくれって言ってるわけじゃないんだ」
「ふふ、分かってるわ」
「なんなら、旅行中ずっとあの部屋を好きに使ってもいい」
「えぇ!?」

 一晩どころか一週間滞在してもいいという辻合の提案に絵里は声をあげて驚く。

「いくらなんでもそこまでは……」
「ここで出会ったのも何かの縁だ。リアも君に懐いているし俺も話相手が出来て嬉しいし遠慮することない」
「でも……悪いわ」
「じゃあ、一つ。頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと?」

 辻合は空になった絵里のグラスにワインを注ぎながら「実は」と話を続けた。

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