Beautiful Life ?

08話

 出来る限りの家事を手伝って、リアの買い物やおしゃべりに付き合い、フリータイムには観光に出る。エリのニューヨークでの日々はあっという間に過ぎ去っていく。
 リアの誕生日には絵里が腕を振るって料理を作り、辻合と三人でリアの誕生日を祝った。辻合に付き合って選んだネックレスをプレゼントされたリアが照れくさそうに「ありがと」と父親に告げる姿を見てほほえましい気持ちになった。

「リアは?」
「眠ったわ」

 リアの部屋で会話をし、リアが眠り自分の部屋へ戻ろうとリビングへ入ると辻合と鉢合わせる。

「今日は色々とありがとう」
「ううん、これくらい。リア、喜んでくれてよかったね」
「あぁ、君のおかげだよ」

 絵里は微笑んだまま無言で首を横に振り「おやすみなさい」と言い立ち去る。「待った」と呼び止められ振り返ると辻合がボトルを手にしていた。

「今から飲むんだけど、一緒にどう?」

 辻合からの誘いを断る理由はなかった。絵里は「喜んで」と答えると辻合に促されてソファに座った。
 絵里は向かいに座る辻合を無意識に見つめていた。15にもなる娘を男手ひとつで育ててきた年上の男。生活力がある頼りがいと年上というだけで包容力を感じるから不思議だ。リアが言っていた通り亡くなった妻を一途に思っているという点が真実なら誠実さも加わってさらに魅力的に見える。
 大きな手、無骨だけど爪がきちんと切りそろえられた清潔感のある指先……グラスに酒を注ぐ手のしぐさにすら知性を感じて見入ってしまった。そのまま状態でグラスを手渡された際に相手の指先が自分の指先に触れると胸が高鳴る。

「ニューヨークはどう? 楽しめてる?」
「えぇ、おかげさまで。親切な親子に出会えたことが一番の思い出かな」
「せっかくの旅行の思い出が俺たち親子とは。なんだか申し訳ないな」

 苦笑いを浮かべる辻合に、絵里は「どうして謝るのよ!」と明るく笑いかける。そんな絵里につられるように辻合も笑みを浮かべる。出会った初日から常に明るく前向きな言動の絵里に辻は少なからず好印象を抱いていた。

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