Beautiful Life ?
 翌朝、絵里がリビングに行くと裕子の様子がいつもと違うことに気が付いた。明らかに顔色が悪い。

「どうしたのママ。顔色が悪いわ」
「うん、風邪引いちゃったみたい」

 気だるそうにダイニングテーブルに腰掛ける裕子を目で追いながら、絵里は自分の額に手を当てた。
 そういえば自分も昨日、風邪気味だったっけ。
 しかし一晩寝たらすっかり良くなったようだ。体調は良かった。自分の風邪を裕子に移してしまったとすぐに察した絵里は、体温計を持って裕子に手渡した。
 
「やだ、38度超えてるじゃない」
「大丈夫、一日寝ていれば……」
「ダメよ。ママは若くないんだからこじらせたら大変」
「なんですって? 聞き捨てならないわね、その台詞」

 冗談を言い笑う余裕のある裕子に安心する絵里。

「病院へ行こう。私が車を出すから。一番近くの内科は……」
「いいって。行ってもたいした診察もせず薬渡されるだけなんだから。薬だけなら市販の薬で十分」

 昨日は美景に病院に行けと言われ行かなかったくせに、他人には行けと言うなんてと心の中で苦笑する。

「あ、そうだ」

 絵里は昨日美景から手渡されたメモの存在を思い出した。

「友達にね、いい内科を教えてもらったの。そこに行こう」
「なに? 絵里、風邪引いてたの」
「うん。たいしたことなかったから病院行かなかったんだけどママに移しちゃったみたい、ごめんね」
「あんたさぁ、自分は行かないくせに他人には行けとか言うんだ」
「言われると思った。でも私は微熱だったもの。38度あったら行ってたわ」

 なかなか病院に行こうとしない裕子だったが夜になっても熱が下がらず、絵里は半ば強引に連れ出して美景に教えてもらった内科へと向かった。

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