Beautiful Life ?
 数分すると、保険証を持った西野が戻ってきた。

「はい、これ。今慌てた受付のスタッフが問診票に書かれた番号に電話しようとしていたところだったよ」
「ありがとう」
「久しぶり。元気そうだな」
「うん、西野君も。白衣姿、サマになってるね」
「ありがとう」

 軽く微笑みかけられ、同じように笑みを返して途切れる会話。

「じゃあ、母が待ってるから行くね」
「小坂さん」

 背を向けるとすぐに呼び止められて立ち止まった。
 向かい合って、じっと彼を見上げた。

「ここ数年誰とも会っていないから久々に昔の話をしたくなった。少し話せない? 今日は急すぎるから、後日にでも」

 突然の再会と誘い。
 断る理由もなく、昔を思い出し西野と同じ気分になっていた絵里は笑顔で頷いた。

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