Beautiful Life ?
「離して! 痛い! 痛いよ!」
「うるさい! 俺は絶対に別れないからな!」

 声の方へ目を向けるとまだ未成年と思われる若い男女が二人。青年が女の子の腕を掴んで力任せに引きずっていく様子を目にして絵里は無意識に飛び出していた。

「離しなさい!」
「な、なんだ? この外国人……」
「嫌がってるでしょう? 力で女を思い通りにしようなんて最低よ!」
「ちょっ、な、なん……」

 無理やり二人を引きはがすと、ライトブラウンの瞳の女の子がさっとわ絵里の背に隠れた。何事かと自然と周りを取り囲むギャラリーに居心地が悪くなったのか、青年は「覚えてろよ」と捨て台詞を吐き捨て走り去って行った。

「大丈夫?」

 振り返って背に隠れた女の子に声をかけると俯いたまま返答がない。小さく震える肩に気づいてそっと手を添えた。

「もう大丈夫よ」

 優しく告げると控えめに笑って「ありがとう」と呟いた。ふわふわのブロンドの髪と瑞々しい白い肌が眩しい美少女だった。

「はじめまして、リアよ」
「はじめまして。私は小坂 絵里(こさか えり)」
「あなた日本人?」
「えぇ、そうよ。観光で来てるの」

 リアの表情がぱあっと明るくなって、絵里の右手を両手で取った。

「お礼がしたいの。エリ、今からうちに来ない?」
「え? い、家?」
「このあと予定でもあるの?」
「いや、特には……」
「だったらうちにいらっしゃいよ! なんだったら観光にも付き合ってあげるわ!」

 屈託のない笑顔。大人っぽい外見をした彼女が少女の顔を見せる。

「で、でもお礼だなんて。そんな大したことしてないのに……」 
「どうして? 私とっても怖かったわ。エリが助けてくれなかったら……」
 ニューヨークの地で美少女との出会い。旅は何が起こるか分からないから面白い。
「じゃあ、ちょっとだけ」
「そうこなくっちゃ! さぁ、行きましょう!」

 異国の地に来て少し大胆な気持ちになっていた絵里は少女について行くことに決めた。

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