Beautiful Life ?
03
天気のいい昼下がり。
ウッドデッキとテラス席のあるオシャレなカフェで絵里は友人の美景と一緒にランチをしていた。
「金曜日の夜?」
「うん。美景も一緒にどう?」
「どうって……」
先日裕子に連れ添って行った病院で再会した同級生の西野と、金曜日の夜に会う約束をしていた。
「久々に昔の話をして一緒に盛り上がろうよ、ね?」
絵里はベーグルを頬張りながらにこやかに言った。そんな絵里を見て美景は小さくため息を吐いた。
「二人きりになれるチャンスじゃない。どうして私を誘うのかな……」
「ははは、やっぱりそうだったのね。あの病院が西野君の家の病院だって知ってて教えてくれたのね」
「彼は小児科医だから再会できる可能性は低いかなって思ってたけど、受付も待合も同じだしうまくいけばもしかしたら、って思って」
絵里は「ありがと」と言ってにんまりと口角を上げ「でも」と言葉を続けた。
「彼に恋をしていたのは昔の話よ。今はもう彼に対して特別な感情は持っていないわ」
「久々に再会してときめかなかった?」
「ときめいた! でも、それも一瞬。昔を思い出して、ね」
清々しい表情の絵里。西野に対して今は昔のような恋心を抱いていないのは一目見て分かる。
「なんだ、作戦失敗だな」
「ふふ、作戦?」
「だって絵里。この間恋を募集中って言ってたから。何か手伝えたらいいなって思って」
「募集しているのは新しい恋よ? 昔の恋に未練はないわ。一途にあこがれ続けたあの日々は今では私の宝物だよ」
そう明るくはっきりと言い放つ絵里に、美景は小さく吹き出した。そして昔を思い出す。
「あの頃はただ思いを寄せることしかできなかったもんね」
「うん。西野君は雲の上の存在だったもん」
「ルックス良し、性格良し、頭良し。おまけにお家はお医者さんだもんね」
力強く頷く絵里を見て、美景は声を上げて笑った。そして水を一口飲むと小さく息を吐いた。
「残念だけど、金曜の夜はダンナの実家で食事をすることになっているの」
「あぁ、そっか。それなら仕方ないね」
美景は最後一口になったベーグルを口に運ぶ絵里をじっと見つめて「ねぇ、絵里」と少し神妙な面持ちで言った。
「私実は、少しおせっかいなことしちゃったかなって反省してたの」
「えぇ? どこが? 久々の同級生との再会は嬉しかったわ」
「実際に今日、絵里の明るい姿を見て……この間もそう、絵里は昔と変わらず明るくて、前向きで……」
「美景?」
絵里の呼びかけに、美景はもう一度「ねぇ、絵里」と言った。
「大丈夫? 本当はまだ、心の整理がついていないんじゃないの?」
美景の思いもしなかった言葉に、絵里は口を閉じたまま瞬きだけを繰り返した。そして少しの間を置いてふっと柔らかに小さく息を吐いた。
「整理かぁ。離婚は出来て清々してる。懲りずにすぐに新しい恋が出来たことも自分の中で自信には繋がった。……でも」
「……でも?」
しばらくの沈黙。絵里は柔らかな表情はそのままで口は閉じたままじっと水の入ったグラスを見つめる。そして彼女らしいどこか愛嬌を感じさせるにこやかな笑顔を見せて「なんでもない」と笑った。
ウッドデッキとテラス席のあるオシャレなカフェで絵里は友人の美景と一緒にランチをしていた。
「金曜日の夜?」
「うん。美景も一緒にどう?」
「どうって……」
先日裕子に連れ添って行った病院で再会した同級生の西野と、金曜日の夜に会う約束をしていた。
「久々に昔の話をして一緒に盛り上がろうよ、ね?」
絵里はベーグルを頬張りながらにこやかに言った。そんな絵里を見て美景は小さくため息を吐いた。
「二人きりになれるチャンスじゃない。どうして私を誘うのかな……」
「ははは、やっぱりそうだったのね。あの病院が西野君の家の病院だって知ってて教えてくれたのね」
「彼は小児科医だから再会できる可能性は低いかなって思ってたけど、受付も待合も同じだしうまくいけばもしかしたら、って思って」
絵里は「ありがと」と言ってにんまりと口角を上げ「でも」と言葉を続けた。
「彼に恋をしていたのは昔の話よ。今はもう彼に対して特別な感情は持っていないわ」
「久々に再会してときめかなかった?」
「ときめいた! でも、それも一瞬。昔を思い出して、ね」
清々しい表情の絵里。西野に対して今は昔のような恋心を抱いていないのは一目見て分かる。
「なんだ、作戦失敗だな」
「ふふ、作戦?」
「だって絵里。この間恋を募集中って言ってたから。何か手伝えたらいいなって思って」
「募集しているのは新しい恋よ? 昔の恋に未練はないわ。一途にあこがれ続けたあの日々は今では私の宝物だよ」
そう明るくはっきりと言い放つ絵里に、美景は小さく吹き出した。そして昔を思い出す。
「あの頃はただ思いを寄せることしかできなかったもんね」
「うん。西野君は雲の上の存在だったもん」
「ルックス良し、性格良し、頭良し。おまけにお家はお医者さんだもんね」
力強く頷く絵里を見て、美景は声を上げて笑った。そして水を一口飲むと小さく息を吐いた。
「残念だけど、金曜の夜はダンナの実家で食事をすることになっているの」
「あぁ、そっか。それなら仕方ないね」
美景は最後一口になったベーグルを口に運ぶ絵里をじっと見つめて「ねぇ、絵里」と少し神妙な面持ちで言った。
「私実は、少しおせっかいなことしちゃったかなって反省してたの」
「えぇ? どこが? 久々の同級生との再会は嬉しかったわ」
「実際に今日、絵里の明るい姿を見て……この間もそう、絵里は昔と変わらず明るくて、前向きで……」
「美景?」
絵里の呼びかけに、美景はもう一度「ねぇ、絵里」と言った。
「大丈夫? 本当はまだ、心の整理がついていないんじゃないの?」
美景の思いもしなかった言葉に、絵里は口を閉じたまま瞬きだけを繰り返した。そして少しの間を置いてふっと柔らかに小さく息を吐いた。
「整理かぁ。離婚は出来て清々してる。懲りずにすぐに新しい恋が出来たことも自分の中で自信には繋がった。……でも」
「……でも?」
しばらくの沈黙。絵里は柔らかな表情はそのままで口は閉じたままじっと水の入ったグラスを見つめる。そして彼女らしいどこか愛嬌を感じさせるにこやかな笑顔を見せて「なんでもない」と笑った。