Beautiful Life ?
04
西野との約束の日、待ち合わせの場所に西野が車で迎えに来て合流。
二人は高校二年の時のクラスメイトだった。車中で共通の同級生や担任の話をするが、会話は続かず途切れてばかりでどこかよそよそしい。お互いに少し緊張していた。卒業以来の再会だ。学生時代特別仲が良かった間柄でもない。仕方がなかった。
しかし徐々に絵里が持ち前の明るさで会話をリードし出すと互いに緊張は解けて行った。
車を停めて入ったのは、竹や古材を利用した風情のある隠れ家的空間の和食の店だった。
「素敵なお店ね。よく来るの?」
「前に一度だけ。いい店だったから覚えてたんだ」
「へぇ!」
ゆったりとした個室の和空間。個室と言っても入口はカーテンがかけられているだけで人の気配が感じられ密室にいるような圧迫感はない。運ばれてくる料理は目で見ても楽しめる鮮やかな盛り付けで絵里のテンションは上がる。
「棚橋美景って覚えてる?」
「うん。小坂さんといつも一緒にいたよね。今は彼女の娘さんがウチの患者なんだ」
「あ、そうだったね。今日美景も一緒にどうって誘ってみたんだけど家の用事があるとかでだめだったの」
「そうなんだ」
「家庭を持つと仲がいい友達でもなかなか予定を合わせるのが難しくなるよね」
「たしかに。独身である程度自由が利く友達は年々減っていってる」
絵里はグラスを手に取った。中身はレモンサワーだ。
「いいのかな……私だけお酒。今更だけど……」
「気にしないで」
車を運転する西野はウーロン茶だ。注文の際に気持ちよく酒を勧めてくれた西野の言葉に甘えてしまった絵里は申し訳ない気持ちになっていた。
しかし気にしないで優しく微笑む西野を見て安心した絵里はグラスに口をつけた。
「小坂さんは?」
「え?」
「結婚」
「してないよ」
今はしていない。そしてすぐに「実は」と何のためらいもなくバツイチであることを告げようとすると「失礼します」と言って店員が料理を持って部屋に入ってきた。
料理をテーブルに並べ店員が去ると西野が口を開く。
「だよな。結婚してたら週末の夜に他の男と一緒にいられるわけがないよな」
「うん、そうね。でも」
「小坂さん、あの頃とあまり変わってないから一目見てすぐに分かったよ」
「ふふ、それはこっちの台詞かな」
進む会話に絵里はバツイチであると打ち明けるタイミングを失う。しかし今、話を遮ってまで打ち明けるべきことでもないだろうと思いそのまま話を進めた。
「あの頃、か。西野君モテたよねぇ。私なんかが近づける存在じゃなかったもの。だから今、二人きりでいるのがちょっと信じられないくらい」
「モテてなんかないよ。誰と勘違いしてる?」
絵里は困惑し謙遜する西野に「またまたぁ」と言ってクスクスと肩を揺らした。
「西野君こそ結婚は?」
「縁がなくて」
「あー、同じ」
目を合わせてにっこりとほほ笑みあう。最初は互いに緊張気味だったがこの頃になると西野からも自然な笑顔がもれるようになった。
この後、酒がすすんで陽気になる絵里がムードメーカーとなって楽しいひと時を過ごすことができた。
二人は高校二年の時のクラスメイトだった。車中で共通の同級生や担任の話をするが、会話は続かず途切れてばかりでどこかよそよそしい。お互いに少し緊張していた。卒業以来の再会だ。学生時代特別仲が良かった間柄でもない。仕方がなかった。
しかし徐々に絵里が持ち前の明るさで会話をリードし出すと互いに緊張は解けて行った。
車を停めて入ったのは、竹や古材を利用した風情のある隠れ家的空間の和食の店だった。
「素敵なお店ね。よく来るの?」
「前に一度だけ。いい店だったから覚えてたんだ」
「へぇ!」
ゆったりとした個室の和空間。個室と言っても入口はカーテンがかけられているだけで人の気配が感じられ密室にいるような圧迫感はない。運ばれてくる料理は目で見ても楽しめる鮮やかな盛り付けで絵里のテンションは上がる。
「棚橋美景って覚えてる?」
「うん。小坂さんといつも一緒にいたよね。今は彼女の娘さんがウチの患者なんだ」
「あ、そうだったね。今日美景も一緒にどうって誘ってみたんだけど家の用事があるとかでだめだったの」
「そうなんだ」
「家庭を持つと仲がいい友達でもなかなか予定を合わせるのが難しくなるよね」
「たしかに。独身である程度自由が利く友達は年々減っていってる」
絵里はグラスを手に取った。中身はレモンサワーだ。
「いいのかな……私だけお酒。今更だけど……」
「気にしないで」
車を運転する西野はウーロン茶だ。注文の際に気持ちよく酒を勧めてくれた西野の言葉に甘えてしまった絵里は申し訳ない気持ちになっていた。
しかし気にしないで優しく微笑む西野を見て安心した絵里はグラスに口をつけた。
「小坂さんは?」
「え?」
「結婚」
「してないよ」
今はしていない。そしてすぐに「実は」と何のためらいもなくバツイチであることを告げようとすると「失礼します」と言って店員が料理を持って部屋に入ってきた。
料理をテーブルに並べ店員が去ると西野が口を開く。
「だよな。結婚してたら週末の夜に他の男と一緒にいられるわけがないよな」
「うん、そうね。でも」
「小坂さん、あの頃とあまり変わってないから一目見てすぐに分かったよ」
「ふふ、それはこっちの台詞かな」
進む会話に絵里はバツイチであると打ち明けるタイミングを失う。しかし今、話を遮ってまで打ち明けるべきことでもないだろうと思いそのまま話を進めた。
「あの頃、か。西野君モテたよねぇ。私なんかが近づける存在じゃなかったもの。だから今、二人きりでいるのがちょっと信じられないくらい」
「モテてなんかないよ。誰と勘違いしてる?」
絵里は困惑し謙遜する西野に「またまたぁ」と言ってクスクスと肩を揺らした。
「西野君こそ結婚は?」
「縁がなくて」
「あー、同じ」
目を合わせてにっこりとほほ笑みあう。最初は互いに緊張気味だったがこの頃になると西野からも自然な笑顔がもれるようになった。
この後、酒がすすんで陽気になる絵里がムードメーカーとなって楽しいひと時を過ごすことができた。