Beautiful Life ?
絵里の自宅前にハザードランプを点滅させた西野の車が停車する。
「送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね」
「うん。おやすみ」
絵里が車を降りようとすると、門扉まで郵便物を取りにきた母親の裕子が現れる。車の中と外でばっちりと目が合う二人。裕子がこちらに向かって頭を下げた。
「……母なの」
絵里が車から降りると西野も続いて車を降りる。そして裕子に向かって「こんばんわ」と告げ会釈をした。
「じゃあ、また」
「えぇ」
そして絵里と軽い会話を交わすと車に乗り込んで走り去っていった。
しんと静まり返る空気に居心地の悪さを感じて絵里は口を開く。
「こんな時間に外に出てどうしたの?」
「夕刊。取り忘れてたから」
新聞を掲げる裕子に「そっか」と告げると絵里は足早に門扉を通り抜ける。しかし裕子の言葉にすぐにまた足を止める。
「なぁに? もう新しいカレシ?」
「違うよ。彼は……友達。高校の時の同級生なの」
「だと思った。今のカレ、あんたにはもったいないもの」
裕子の言うことは最もだと思ってはいるが、母親に言われるのは少し気に入らない。絵里は目を細め、挑発的な口調で言った。
「ママ、私諦めてないわよ? これからまだまだ恋だってするし。ママが嫉妬するくらいのいい人つかまえて……」
「そう。諦めてない、か。……結婚も?」
「……結婚は」
挑発的な態度は一瞬だった。「結婚」の二文字に絵里は言葉を詰まらせる。
「ま、いいけどさ。気持ちの区切りもつけないで、次だ次だって口ばかり明るく振る舞っても心がついていかないわよ」
「どういうことよ。だいたい、次って。西野君はそんなんじゃないって言ってるじゃない」
「はいはい」
絵里の肩をポンと叩くと、裕子は先に家の中へと入って行く。パタンとドアが閉まる音を聞きながら絵里は呟いた。
「気持ちがついていかない、か」
そのまましばらくたちつくし、肩がぶるっと震える肌寒さにはっとして腕をさすった。注意深く耳を傾けると聞こえてくる虫の声。夏の終わりと秋の訪れを感じた。
「送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね」
「うん。おやすみ」
絵里が車を降りようとすると、門扉まで郵便物を取りにきた母親の裕子が現れる。車の中と外でばっちりと目が合う二人。裕子がこちらに向かって頭を下げた。
「……母なの」
絵里が車から降りると西野も続いて車を降りる。そして裕子に向かって「こんばんわ」と告げ会釈をした。
「じゃあ、また」
「えぇ」
そして絵里と軽い会話を交わすと車に乗り込んで走り去っていった。
しんと静まり返る空気に居心地の悪さを感じて絵里は口を開く。
「こんな時間に外に出てどうしたの?」
「夕刊。取り忘れてたから」
新聞を掲げる裕子に「そっか」と告げると絵里は足早に門扉を通り抜ける。しかし裕子の言葉にすぐにまた足を止める。
「なぁに? もう新しいカレシ?」
「違うよ。彼は……友達。高校の時の同級生なの」
「だと思った。今のカレ、あんたにはもったいないもの」
裕子の言うことは最もだと思ってはいるが、母親に言われるのは少し気に入らない。絵里は目を細め、挑発的な口調で言った。
「ママ、私諦めてないわよ? これからまだまだ恋だってするし。ママが嫉妬するくらいのいい人つかまえて……」
「そう。諦めてない、か。……結婚も?」
「……結婚は」
挑発的な態度は一瞬だった。「結婚」の二文字に絵里は言葉を詰まらせる。
「ま、いいけどさ。気持ちの区切りもつけないで、次だ次だって口ばかり明るく振る舞っても心がついていかないわよ」
「どういうことよ。だいたい、次って。西野君はそんなんじゃないって言ってるじゃない」
「はいはい」
絵里の肩をポンと叩くと、裕子は先に家の中へと入って行く。パタンとドアが閉まる音を聞きながら絵里は呟いた。
「気持ちがついていかない、か」
そのまましばらくたちつくし、肩がぶるっと震える肌寒さにはっとして腕をさすった。注意深く耳を傾けると聞こえてくる虫の声。夏の終わりと秋の訪れを感じた。