Beautiful Life ?

05

 中途採用者を対象とした一週間の研修を終え絵里が配属されたのは営業部。
 誰もが憧れる海外化粧品ブランドを取り扱う会社で、絵里は営業一課に所属し主に代理店サポートを担当する。
 しかし本格的な業務に入れるのはまだ先。数日は雑用をこなしながら仕事を覚えていく。
 
「小坂さん、この書類のファックスお願いしてもいいですか?」
「はい。分かりました」

 絵里に指示を出すのはおそらく絵里より年下のまだ二十代の女性。絵里は彼女が近づいたときにふわりと香る香水の匂いにひそかに反応していた。

(ん? 香水を変えたのかしら。今日は目尻につけまつげをつけているのね)

 絵里の配属された営業部は男女を問わず美意識の高い人間が多い。男性はスマートにスーツを着こなし、女性は上品に華やかに着飾る。美容関係の仕事に就いていた母親の影響で絵里も美容やトレンドには気を遣う方である。
 未経験の業界で絵里が採用されたのは、CA時代に培われたそつのない対応能力と職場に馴染む華やかな雰囲気があったからだろう。
 絵里は送付状を作成すると席を立ってファックスがある場所へ向かった。

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