Beautiful Life ?
06
絵里が営業部に配属されしばらくして、絵里の歓迎会が開かれた。部長と課長、そして絵里と仕事で関わることの多い若い社員総勢15名が、会社近くの居酒屋の個室を貸し切って絵里を歓迎する。
飲みの席では無礼講。いつもは真面目に働く男性が陽気に笑い、すまし顔の上品なイメージの女性が赤い顔をしてグラスを開けていく。絵里は普段見ることのない職場仲間の新たな一面を目の当たりにして最初は少し戸惑ったが、慣れてくればその変化を楽しめるようになっていた。そうなれば絵里の酒の進むペースも上がる。陽気なムードにつられて絵里も周りと打ち解け楽しく飲んでいた。
「えっ! 小坂さんって33歳なの!? 見えない! 年下だと思ってた……ごめんなさい、いつも偉そうな態度で」
「いいのいいの! 私は後輩なんだから!」
「うちに転職する前は何してたんですかぁ?」
一通り全員の席に回って挨拶を済ませると、絵里は普段仕事で関わることの多い女性たちの席に落ち着いて楽しく会話をしていた。
予約をしていた二時間はあっという間で、個々で二次会の話が出始める。
「ごめん、ちょっとお手洗いにいってくるね」
絵里は自分のバッグを持つと席を立った。
個室を出たタイミングで携帯が鳴りだした。一件のメール受信。ディスプレイに表示された名前は西野だった。
メールの内容は一週間お疲れ様の簡素な内容のものだった。西野はあまりメールで長文は送ってこない。おそらく返信をすれば電話がかかってくるだろう。いつものパターンだった。
西野と最後に会った日から変わらず時々こうして連絡を取り合い、特に進展がないまま友人関係が続けている。しかし、次に二人で会ったらこの今の関係は変わるだろう。絵里は分かっていた。分かっているから今は少し、距離を置きたい気分だった。ゆっくり考えたい。肝心の自分の気持ちが分からなかった。
絵里は返信は家に帰ってからにしようと携帯をバッグにしまった。
「小坂さん」
名前を呼ばれて振り返ると入れ違いで手洗いから戻ってきたであろう松永が立っていた。
「今日はどう? 楽しめてる?」
「はい、とても。歓迎会、開いていただいてありがとうございました」
「いえいえ」
松永の手がポンと絵里の肩に乗せられて小さくびくりと身が震えた。
「小坂さん、ずっと宮本さんたちと飲んでるから全然話せなくて残念だったよ」
「す、すみません……」
「謝らなくてもいいんだ。二次会に僕たちは行きつけのバーに行こうと思っているんだけど小坂さんも一緒にどう?」
「え、二次会ですか……?」
「今日の主役は君だよ。まさか帰るなんて言わないよね?」
「はい。じゃあ、二次会は部長たちとバーに行こうかな」
明るい口調で愛想笑いをすると松永は満足そうに頷いた。
飲みの席では無礼講。いつもは真面目に働く男性が陽気に笑い、すまし顔の上品なイメージの女性が赤い顔をしてグラスを開けていく。絵里は普段見ることのない職場仲間の新たな一面を目の当たりにして最初は少し戸惑ったが、慣れてくればその変化を楽しめるようになっていた。そうなれば絵里の酒の進むペースも上がる。陽気なムードにつられて絵里も周りと打ち解け楽しく飲んでいた。
「えっ! 小坂さんって33歳なの!? 見えない! 年下だと思ってた……ごめんなさい、いつも偉そうな態度で」
「いいのいいの! 私は後輩なんだから!」
「うちに転職する前は何してたんですかぁ?」
一通り全員の席に回って挨拶を済ませると、絵里は普段仕事で関わることの多い女性たちの席に落ち着いて楽しく会話をしていた。
予約をしていた二時間はあっという間で、個々で二次会の話が出始める。
「ごめん、ちょっとお手洗いにいってくるね」
絵里は自分のバッグを持つと席を立った。
個室を出たタイミングで携帯が鳴りだした。一件のメール受信。ディスプレイに表示された名前は西野だった。
メールの内容は一週間お疲れ様の簡素な内容のものだった。西野はあまりメールで長文は送ってこない。おそらく返信をすれば電話がかかってくるだろう。いつものパターンだった。
西野と最後に会った日から変わらず時々こうして連絡を取り合い、特に進展がないまま友人関係が続けている。しかし、次に二人で会ったらこの今の関係は変わるだろう。絵里は分かっていた。分かっているから今は少し、距離を置きたい気分だった。ゆっくり考えたい。肝心の自分の気持ちが分からなかった。
絵里は返信は家に帰ってからにしようと携帯をバッグにしまった。
「小坂さん」
名前を呼ばれて振り返ると入れ違いで手洗いから戻ってきたであろう松永が立っていた。
「今日はどう? 楽しめてる?」
「はい、とても。歓迎会、開いていただいてありがとうございました」
「いえいえ」
松永の手がポンと絵里の肩に乗せられて小さくびくりと身が震えた。
「小坂さん、ずっと宮本さんたちと飲んでるから全然話せなくて残念だったよ」
「す、すみません……」
「謝らなくてもいいんだ。二次会に僕たちは行きつけのバーに行こうと思っているんだけど小坂さんも一緒にどう?」
「え、二次会ですか……?」
「今日の主役は君だよ。まさか帰るなんて言わないよね?」
「はい。じゃあ、二次会は部長たちとバーに行こうかな」
明るい口調で愛想笑いをすると松永は満足そうに頷いた。