Beautiful Life ?
　松永と楽しく会話を交わしながら駅へ向かう途中、会社から歩いてほんの2、3分ほどのところで思わぬ人物が絵里の前に現れた。
　その人物を前に立ち止まる絵里に向かって松永が「彼氏、イケメンじゃん」と言い肩を叩くと「じゃあ、僕はここで」と言ってにこやかに立ち去って行った。

「どうして……」

　現れたのは西野だった。彼は「久しぶり」と言うと絵里の顔を見て少し安心したような笑みを見せた。

「急にごめん。家か会社か。どっちに会いに行けば迷惑じゃないか考えたけど難しくて。でも迷惑だって分かってても理由も分からず避けられたまま終わるのは嫌だと思った」

　目を泳がせ動揺を見せる絵里。
　西野のクリニックに会いに行った日、あの場で少女と女性と一緒にいる西野を見て以来、絵里は彼からの連絡に出ることも返事を返すこともなかった。

「近くに車を停めてるから。行こう」
「ごめんなさい、私……」

　逃げるように後ずさる絵里の手を西野はためらいなく取る。そして「行こう」ともう一度絵里の目をまっすぐに見据えて言うとその手を引いた。
　今までの西野にはない強引な行動。自分の手を握る西野の手が驚くほど冷たくて、いつから自分を待ってここにいたのだろうと思うと絵里はズキンとした胸の痛みを感じた。

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表紙・目次

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