Beautiful Life ?
 目的もなく走る車。車内では沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは絵里だった。

「……いつから待ってたの? 寒かったでしょう」

 西野は「うん」とだけ答えると口を閉じた。そして信号で車が停車すると再び口を開いた。

「急に連絡が取れなくなったから心配したよ」
「……ごめんなさい」
「元気そうでよかった。でも……急になぜ?」
「それは……」

 なぜ急に自分を避けるようになったのか。西野はまったく心当たりがないようだった。
 言いかけて再び口を閉じる絵里が再び口を開くのを、西野は辛抱強く待つ。しばらくして意を決したようにゆっくりと絵里が口を開き始めた。

「自信が、なくなって」
「自信……?」
「二度あんな思いをしたら、私、二度と立ち直れないような気がして」
「……?」

 絵里の言おうとしていることにまったく見当がつかない西野はただじっと黙って絵里の話に耳を傾ける。

「西野君に言っていないことがあるの。私半年前に離婚したばかりなの」

 少しの沈黙。やがてゆっくりと左折する際にすれ違う車の眩しいヘッドライトの光に目を細めながら絵里は前を向く。車が数台しか停まっていないコンビニの広い駐車場へ入った。コンビニの入り口から一番遠い場所へ駐車するとサイドブレーキを引いてパーキングに入れた。カーステレオから小音で流れてくる音楽は今の雰囲気を邪魔しない静かなバラード曲だった。

「……それが。離婚が俺を避けるようになった理由?」

 絵里は目を閉じて奥歯を噛みしめた。その様子を西野は静かに見守り彼女が再び口を開くのを待つ。絵里は深呼吸をするようにゆっくりと息を吐くと自分の思いをすべて西野に話した。

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