Beautiful Life ?
リアに連れられてついたその場所はニューヨークの高級住宅街だった。
「ここにあなたの家があるの……?」
「うん。でもアパートだよ。家賃はパパの会社が出してくれるの」
「へぇ……」
「あ、ここだよ」
リアが指を差した建物はアパートと言っても重厚で高級感のある外観だ。絵里はリアについてエレベーターに乗り玄関に入る。家の中も絵里が住んだことがあるような日本のアパートに比べたらうんと広かった。
「パパ、何してる人なの?」
「日系金融機関のIT部門でエンジニアをしてるのよ」
「日系……?」
「あ。私のパパ、日本人なのよ」
「えっ!?」
「どうぞ、座って」
オシャレな家具で飾られたリビングに案内されてソファに腰掛けた。
「何か飲む?」
「ありがとう。飲み物は自分で持ち歩いてるからおかまいなく」
日本から持ってきていたペットボトルを取り出すと「じゃあお菓子用意するね」と言ってリアはキッチンの方へ消えて行った。
リアを待つ間、絵里は落ち着かなくて部屋の中をキョロキョロと見渡す。
ふと視界に飛び込んできたのはチェストの上に飾られた写真立てだった。リアにそっくりな大人の女性が柔らかに微笑んでいる。
ため息が出るほどの綺麗な女性の笑顔に絵里は釘付けになって写真を見つめていた。
「ママ、キレイでしょ?」
プレートにお菓子を乗せキッチンから戻ってきたリアが写真たての前に立つ。
「うん。リアにそっくりね。不在のようだけど……ご両親は共働き?」
「ううん、ママは五年前に交通事故で死んじゃったの」
「……あ。ごめんなさい」
「ううん!」
明るく笑うとリアはテーブルにプレートを置くと絵里の向かいに座った。
「パパとママ、日本で出会ったんだって。ママが日本に留学しててパパと出会って恋に落ちて……」
「へぇ……素敵ね」
「ママから時々日本での生活について聞いていたの。私もいつか留学したいなって思ってて。最近日本語の勉強はじめたのよ!」
「そうなのね。もしかして、私に興味を持ったのって……」
「うん。エリが日本人で、楽しいお話たくさん聞けそうな気がしたから」
「ふふ」
「エリってばずっと警戒してたでしょ。安心して。旅行者を騙そうなんてそんなことこれっぽっちも思ってないわ!」
「はは、バレちゃってたか。うん、ごめんね。信じるよ」
リアに出されたクリームたっぷりのケーキを一口文分フォークですくって口に運ぶ。甘いものが好物の絵里は自然と頬が緩む。
「でも日本のことなら日本人のパパに聞けばいいのに」
「パパはダメー。最近何かとあれはダメこれはダメって口うるさいの。あまり話したくないわ!」
「ふふ」
「なぁに? 笑って」
「いや、私にもそんな時期あったなぁって。リアって歳いくつ?」
「もうすぐ15よ」
うんうんと頷いて納得。リアは反抗期まっただ中のようだ。
「ねぇ、リア。さっきの男の人……」
「……うん、元彼」
「揉めてたね」
「ねぇ、エリ。なんでスキって続かないのかな」
「……うーん。私も分かんない。永遠に分かんないと思う」
「永遠、ってあるのかな」
「どうかしらね」
「でもパパはきっと永遠にママのこと愛し続けるのかなぁって思う」
「なんで?」
「だって、ママが亡くなって五年も経つのに未だにママ一筋なのよ?」
「素敵ね」
絵里はリアの母親の写真に目を向け静かに微笑んだ。
そして結婚したばかりの頃の自分を思い出し自然と視線が下がって行く。
「エリ?」
「……は、ごめんなさい」
「どうしたの?」
「ううん。今日ここに着いたばっかで休憩もせずに色々歩き回ってたから疲れちゃったのかな」
「そうなの? 無理しちゃだめよ。少しソファで横になったら?」
「でも……」
「いいから、ほら」
リアに肩を押されて横たわる。
横になったら疲れと眠気が一気に押し寄せてきた。
「ねぇ、エリ。いつまでここにいるの?」
「うん、一週間……」
リアからの質問に答えたのを最後に絵里はそのまま意識を手放した。
「ここにあなたの家があるの……?」
「うん。でもアパートだよ。家賃はパパの会社が出してくれるの」
「へぇ……」
「あ、ここだよ」
リアが指を差した建物はアパートと言っても重厚で高級感のある外観だ。絵里はリアについてエレベーターに乗り玄関に入る。家の中も絵里が住んだことがあるような日本のアパートに比べたらうんと広かった。
「パパ、何してる人なの?」
「日系金融機関のIT部門でエンジニアをしてるのよ」
「日系……?」
「あ。私のパパ、日本人なのよ」
「えっ!?」
「どうぞ、座って」
オシャレな家具で飾られたリビングに案内されてソファに腰掛けた。
「何か飲む?」
「ありがとう。飲み物は自分で持ち歩いてるからおかまいなく」
日本から持ってきていたペットボトルを取り出すと「じゃあお菓子用意するね」と言ってリアはキッチンの方へ消えて行った。
リアを待つ間、絵里は落ち着かなくて部屋の中をキョロキョロと見渡す。
ふと視界に飛び込んできたのはチェストの上に飾られた写真立てだった。リアにそっくりな大人の女性が柔らかに微笑んでいる。
ため息が出るほどの綺麗な女性の笑顔に絵里は釘付けになって写真を見つめていた。
「ママ、キレイでしょ?」
プレートにお菓子を乗せキッチンから戻ってきたリアが写真たての前に立つ。
「うん。リアにそっくりね。不在のようだけど……ご両親は共働き?」
「ううん、ママは五年前に交通事故で死んじゃったの」
「……あ。ごめんなさい」
「ううん!」
明るく笑うとリアはテーブルにプレートを置くと絵里の向かいに座った。
「パパとママ、日本で出会ったんだって。ママが日本に留学しててパパと出会って恋に落ちて……」
「へぇ……素敵ね」
「ママから時々日本での生活について聞いていたの。私もいつか留学したいなって思ってて。最近日本語の勉強はじめたのよ!」
「そうなのね。もしかして、私に興味を持ったのって……」
「うん。エリが日本人で、楽しいお話たくさん聞けそうな気がしたから」
「ふふ」
「エリってばずっと警戒してたでしょ。安心して。旅行者を騙そうなんてそんなことこれっぽっちも思ってないわ!」
「はは、バレちゃってたか。うん、ごめんね。信じるよ」
リアに出されたクリームたっぷりのケーキを一口文分フォークですくって口に運ぶ。甘いものが好物の絵里は自然と頬が緩む。
「でも日本のことなら日本人のパパに聞けばいいのに」
「パパはダメー。最近何かとあれはダメこれはダメって口うるさいの。あまり話したくないわ!」
「ふふ」
「なぁに? 笑って」
「いや、私にもそんな時期あったなぁって。リアって歳いくつ?」
「もうすぐ15よ」
うんうんと頷いて納得。リアは反抗期まっただ中のようだ。
「ねぇ、リア。さっきの男の人……」
「……うん、元彼」
「揉めてたね」
「ねぇ、エリ。なんでスキって続かないのかな」
「……うーん。私も分かんない。永遠に分かんないと思う」
「永遠、ってあるのかな」
「どうかしらね」
「でもパパはきっと永遠にママのこと愛し続けるのかなぁって思う」
「なんで?」
「だって、ママが亡くなって五年も経つのに未だにママ一筋なのよ?」
「素敵ね」
絵里はリアの母親の写真に目を向け静かに微笑んだ。
そして結婚したばかりの頃の自分を思い出し自然と視線が下がって行く。
「エリ?」
「……は、ごめんなさい」
「どうしたの?」
「ううん。今日ここに着いたばっかで休憩もせずに色々歩き回ってたから疲れちゃったのかな」
「そうなの? 無理しちゃだめよ。少しソファで横になったら?」
「でも……」
「いいから、ほら」
リアに肩を押されて横たわる。
横になったら疲れと眠気が一気に押し寄せてきた。
「ねぇ、エリ。いつまでここにいるの?」
「うん、一週間……」
リアからの質問に答えたのを最後に絵里はそのまま意識を手放した。