Beautiful Life ?
絵里がリアを連れてやってきたのは先ほど二人がいた場所から徒歩で行ける場所の自宅だった。裕子は外出中で留守だった。絵里はリアをリビングに招き温かいお茶を淹れた。
「お茶、飲めたよね?」
「うん、大好き」
リアは興味深そうにキョロキョロと部屋の中を見渡している。
「へぇ~ここが絵里のお家かぁ。ねぇ、今度日本に来たときは、泊りにきてもいい?」
「えぇ、もちろん」
リアはにっこりとほほ笑むとお茶を手に取った。口に含むと「アチッ」とペロリと舌を出す。その様子を絵里は笑顔で見つめていた。
しばらくは他愛のない話をして笑い合う二人だったが、絵里はリアが自分に聞きたいと求めている話の内容を理解していたため自ら話を切り出した。
「リア。私ね、あなたに話していなかったことがあるの」
「え?」
「リアとニューヨークで出会った時、私、離婚直後で人生のどん底だったんだ」
リアの動作がピクリと止まる。そしてじっと絵里を見つめた。
「で、でも。そんな風には全然……」
「うん。自分では完全に前を向いているつもりだったし第二の人生を楽しもう! ってとにかく気分が高揚していた。そうじゃなきゃ、異国の地で一週間滞在することなんてできなかったと思う」
絵里は両手で湯呑を包みながら「やっぱり、知らなかった?」と言った。
「あなたのパパには、少し話してたんだけど」
「離婚のこと?」
「……うん、軽く。お酒の勢いで、離婚したばかりで子供はいないってことだけ。詳しいことは話せなかった」
笑顔だった絵里の表情が少しずつ曇ってくる。
「あなたのパパのことは好きだった。でもあの時の私には、辛かった日々を告白して心の傷を見せる勇気も……ううん、告白しようとする意思すらなくて、本気で向き合おうっていう気持ちの余裕がなかった。だから逃げてしまった。あなたのパパは何も悪くないのに、信じた人に裏切られるのはもうたくさんだって、どうせうまくいきっこないって決めつけて……」
「ごめんなさい」。最後にそう告げ頭を下げた。リアは慌てて立ち上がると「やめて」と言って絵里の肩に手を置いた。
「とても辛いことがあったのね」
優しいリアの声に顔を上げる。膝たちになったリアと目を合わせると彼女の口角が柔らかに上がるのを見て絵里の表情も和らぐ。リアは一呼吸置くとふっきれたような口調で言った。
「本当はエリが私のママになってくれることを期待して夢にも見てたんだけど……新しくママになる人もとてもいい人よ」
「そうだったね」
リアから辻合が再婚すると言う報告を事前にメールで受けていた絵里は特に動揺する様子もない。
「どんな人なの? もしかして今日一緒に……」
「それは、本人から直接聞いてよね」
「え……?」
リアは歯を見せて無邪気にいたずらっぽく笑った。
「エリは私のママにはならなかったけど、一生友達なんだから。だからエリとパパがぎくしゃくしたまんまじゃまたウチに遊びにきにくいでしょ? 私だってエリと会いにくい」
「リア……」
ニューヨークでリアは期待を込めて辻合との仲を押して応援してくれた。その期待を絵里は裏切った。
責められることも予想していたのに、そんな自分を友達だと言ってくれるリアの優しさが絵里は嬉しかった。
「このあと、宿泊するホテルのレストランでパパと待ち合わせているの。私は部屋でルームサービスを頼むから、エリが行って」
「お茶、飲めたよね?」
「うん、大好き」
リアは興味深そうにキョロキョロと部屋の中を見渡している。
「へぇ~ここが絵里のお家かぁ。ねぇ、今度日本に来たときは、泊りにきてもいい?」
「えぇ、もちろん」
リアはにっこりとほほ笑むとお茶を手に取った。口に含むと「アチッ」とペロリと舌を出す。その様子を絵里は笑顔で見つめていた。
しばらくは他愛のない話をして笑い合う二人だったが、絵里はリアが自分に聞きたいと求めている話の内容を理解していたため自ら話を切り出した。
「リア。私ね、あなたに話していなかったことがあるの」
「え?」
「リアとニューヨークで出会った時、私、離婚直後で人生のどん底だったんだ」
リアの動作がピクリと止まる。そしてじっと絵里を見つめた。
「で、でも。そんな風には全然……」
「うん。自分では完全に前を向いているつもりだったし第二の人生を楽しもう! ってとにかく気分が高揚していた。そうじゃなきゃ、異国の地で一週間滞在することなんてできなかったと思う」
絵里は両手で湯呑を包みながら「やっぱり、知らなかった?」と言った。
「あなたのパパには、少し話してたんだけど」
「離婚のこと?」
「……うん、軽く。お酒の勢いで、離婚したばかりで子供はいないってことだけ。詳しいことは話せなかった」
笑顔だった絵里の表情が少しずつ曇ってくる。
「あなたのパパのことは好きだった。でもあの時の私には、辛かった日々を告白して心の傷を見せる勇気も……ううん、告白しようとする意思すらなくて、本気で向き合おうっていう気持ちの余裕がなかった。だから逃げてしまった。あなたのパパは何も悪くないのに、信じた人に裏切られるのはもうたくさんだって、どうせうまくいきっこないって決めつけて……」
「ごめんなさい」。最後にそう告げ頭を下げた。リアは慌てて立ち上がると「やめて」と言って絵里の肩に手を置いた。
「とても辛いことがあったのね」
優しいリアの声に顔を上げる。膝たちになったリアと目を合わせると彼女の口角が柔らかに上がるのを見て絵里の表情も和らぐ。リアは一呼吸置くとふっきれたような口調で言った。
「本当はエリが私のママになってくれることを期待して夢にも見てたんだけど……新しくママになる人もとてもいい人よ」
「そうだったね」
リアから辻合が再婚すると言う報告を事前にメールで受けていた絵里は特に動揺する様子もない。
「どんな人なの? もしかして今日一緒に……」
「それは、本人から直接聞いてよね」
「え……?」
リアは歯を見せて無邪気にいたずらっぽく笑った。
「エリは私のママにはならなかったけど、一生友達なんだから。だからエリとパパがぎくしゃくしたまんまじゃまたウチに遊びにきにくいでしょ? 私だってエリと会いにくい」
「リア……」
ニューヨークでリアは期待を込めて辻合との仲を押して応援してくれた。その期待を絵里は裏切った。
責められることも予想していたのに、そんな自分を友達だと言ってくれるリアの優しさが絵里は嬉しかった。
「このあと、宿泊するホテルのレストランでパパと待ち合わせているの。私は部屋でルームサービスを頼むから、エリが行って」