Beautiful Life ?
「綺麗な景色ね……」
「あぁ」

 絵里はニューヨークに滞在した最後の夜に見た夜景を思い出していた。

「キラキラしてる。宝石箱のよう」

 絵里はじっと景色を見ながらポツリ呟く。あの時は輝かしい明日を夢見ることも想像することも出来なかったが今違う。夢も希望も再び持つことが出来る。そんな気がした。

「人生って何が起こるか分からないけど」
「……うん」
「平等に明日はやってくる。その明日が天国から地獄になることもあるし、地獄から天国になることだってある。だから諦めないで前を向いていればいつか必ずまた笑える時が来る。そう思う」
「うん! その考え、好きよ!」
「うわ、ど、どうした急に」

 絵里は身を乗り出して興奮気味に言うとストンと再び腰を下ろす。

「あなたにも報告するから」
「何を?」
「リアと約束したの。彼氏が出来たら報告するねって」
「それは楽しみだな」
「あー、無理だろって顔してる? 見てなさいよ~」
「ははっ!」

 笑い合う二人の間にわだかまりは無くなっていた。

「ねぇ、ずっと思っていたんだけど君って言うのやめない?」
「そっちも。あなたって言うのやめないか?」

 互いのことをなんて呼び合おうか、そんな些細な会話からはじまって数時間が過ぎるような。
 ニューヨークで酒を飲みかわしながらたくさんの会話をして笑い合っていたころのように、楽しいひと時を過ごした。

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