Beautiful Life ?
「今の絵里、昔と同じ顔してる」
「そう? 小じわは増えてるけど」
「違う。昔と同じ、恋してる顔してる」

 少しだけ頬を赤く染め絵里は満面の笑みを見せた。
 その後二人は昔話に花を咲かせ時間を忘れて語り合った。

「予定より長居しちゃった」
「この後予定でもあるの?」
「ううん」
「だったら。子供もまだ寝てるしゆっくりしていけばいいのに」
「幼稚園のお迎えとかもあるでしょ? 赤ちゃんが寝ている間に美景も少しゆっくりした方がいいよ」
「ふふ、そうね。ありがと」

 玄関にはこの日も家族写真と綺麗な生花が飾られている。絵里は「憧れるなぁ」と笑顔で呟いた。

「え?」
「美景の家に来ると、いつも幸せな暮らしが聞かなくても伝わってきてすごく憧れる」
「何言ってるのよ。絵里こそ。この歳になっても恋してどんどん綺麗になって。妬けちゃうな」
「そう?」

 絵里は靴を履くと振り返った。

「赤ちゃん可愛いかったぁ。また抱かせてね」
「うん、またいつでも遊びに来て」
「うん」

 扉を開くと熱風が全身を撫で耳には忙しく鳴く蝉たちの鳴き声。
 青い空に真っ白な雲。そして、

「じゃあ、またね!」

 夏の輝く太陽にも負けない絵里のキラキラとした笑顔。
 扉を閉めるとリビングへ戻って絵里からもらったプレゼントを開ける。
 上の子供には音楽が鳴る絵本と今の時期にぴったりなひさしのおおきな帽子。下の子供には一年後に着れそうな夏らしいフリルのついた水色のワンピース。美景は「可愛い」と思わず声を上げる。

「絵里ってセンスいいのよねぇ」

 ベビーベッドで眠る子供の泣き声に反応して、プレゼントをテーブルの上に置いて子供の元へ行く。

「はいはーい。おっぱいかなぁ?」

 子供を抱き上げ、あやしながら部屋の中をうろつく。レースのカーテンの隙間から外を覗くと照りつける太陽の光の強さに目を細めた。
 ふと子供を抱いて興奮気味に微笑む先ほどの絵里の笑顔を思い出す。
 いつか絵里も親になる時がきたら、その時は色々とアドバイスも出来るし助けてあげたい。

「って、気が早すぎるか。というかママってばいつもおせっかいかな~」

 美景は泣き止む気配のない子供に笑顔でそう話しかけると、授乳をするために寝室へと向かった。

(おわり)

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