Beautiful Life ?
04話
絵里がドライヤーで髪を乾かし洋服に着替えてリビングへ行くと、ソファに先ほどバスルームで鉢合わせた男性とテーブルを挟んで向かい合ってリアが座っている。
男性が誰なのかはすぐに察しがついた。
きりっとした目と通った鼻筋、固く唇を閉じてじっとリアを見つめている姿は落ち着いた大人の男性の雰囲気が感じられる。くせの少ない艶のある見慣れた黒髪には馴染みがある。父親は日本人と言っていたリアの父親に間違いないだろう。
「初対面の外国人を家に上げるなんて……リア、非常識にも程があるだろう」
リアは黙ったまま俯いている。説教を受けていることが一目見て分かり、しかもその原因が自分であることをすぐに察した絵里はリアを庇おうと二人の間に割って入ろうとした。
しかし割って入る前に、目が合い駆け寄ってきたリアに腕を取られぎゅっと引き寄せられた。
「エリ……!」
「え?」
「パパ! エリはね、すごく可哀そうなんだよ!」
「……え」
何がなんだか分からない。絵里は父親に向かって涙目で必死に訴えるリアの迫力に押されて言葉を失う。ふと「私に話を合わせてね?」と先ほどのリアの言葉が頭の片隅をよぎる。絵里は口を閉じ、ここはリアの言う通り黙って彼女の言うことに話を合わせようとした。
……が。
「恋人に酷い振られかたをして傷ついたエリは傷心旅行にニューヨークへきたの。それなのに空港に着いていきなりスリにあって全財産の半分を失ってしまったそうよ……チェックインしたホテルでは着いてそうそう銃撃戦に巻き込まれて命からがらなんとか逃げ出せたけどトランクの一つを失ってしまって日本から持ってきた下着全部無くしてしまったの! 異国の地に来てトラブル続きで替えのパンツもないのよ!? ねぇ、可哀そうでしょ!?」
唖然。
かなり無理のあるリアの作り話に、しっかりしているように見えるけどやっぱりまだ子供だと納得する。こんな嘘ばればれの作り話で父親を納得させられるわけがない。絵里は半分諦めて謝罪の言葉を伝えようとそろっと父親の方へ目を向けた。
「日本人……? 言われてみれば……」
父親の反応は意外なものだった。
怒るか不快感をあらわにすると思いきや、絵里が日本人だと知って彼女に目を向け興味を示しているようだ。
「パパ、こんなにも可哀そうなエリを見放せって……そんな冷たいこと言うの?」
腕を掴む手にぎゅっと力が込められてリアの必死さが伝わってきた。絵里は出会ったばかりの自分にここまでしてくれるリアの優しさに喜びを感じながらも「もういいのよ」と彼女の手に自分の手を添えた。そして父親に謝り荷物をまとめ出て行くと告げようとしたその時。
「勝手にしなさい」
父親はため息交じりにそう告げるとリビングを出て行った。
勝手にしなさい、それはつまり絵里がこの家に滞在するということを認めたということだろう。再び唖然とする絵里にリアは満面の笑みでウィンクをした。
男性が誰なのかはすぐに察しがついた。
きりっとした目と通った鼻筋、固く唇を閉じてじっとリアを見つめている姿は落ち着いた大人の男性の雰囲気が感じられる。くせの少ない艶のある見慣れた黒髪には馴染みがある。父親は日本人と言っていたリアの父親に間違いないだろう。
「初対面の外国人を家に上げるなんて……リア、非常識にも程があるだろう」
リアは黙ったまま俯いている。説教を受けていることが一目見て分かり、しかもその原因が自分であることをすぐに察した絵里はリアを庇おうと二人の間に割って入ろうとした。
しかし割って入る前に、目が合い駆け寄ってきたリアに腕を取られぎゅっと引き寄せられた。
「エリ……!」
「え?」
「パパ! エリはね、すごく可哀そうなんだよ!」
「……え」
何がなんだか分からない。絵里は父親に向かって涙目で必死に訴えるリアの迫力に押されて言葉を失う。ふと「私に話を合わせてね?」と先ほどのリアの言葉が頭の片隅をよぎる。絵里は口を閉じ、ここはリアの言う通り黙って彼女の言うことに話を合わせようとした。
……が。
「恋人に酷い振られかたをして傷ついたエリは傷心旅行にニューヨークへきたの。それなのに空港に着いていきなりスリにあって全財産の半分を失ってしまったそうよ……チェックインしたホテルでは着いてそうそう銃撃戦に巻き込まれて命からがらなんとか逃げ出せたけどトランクの一つを失ってしまって日本から持ってきた下着全部無くしてしまったの! 異国の地に来てトラブル続きで替えのパンツもないのよ!? ねぇ、可哀そうでしょ!?」
唖然。
かなり無理のあるリアの作り話に、しっかりしているように見えるけどやっぱりまだ子供だと納得する。こんな嘘ばればれの作り話で父親を納得させられるわけがない。絵里は半分諦めて謝罪の言葉を伝えようとそろっと父親の方へ目を向けた。
「日本人……? 言われてみれば……」
父親の反応は意外なものだった。
怒るか不快感をあらわにすると思いきや、絵里が日本人だと知って彼女に目を向け興味を示しているようだ。
「パパ、こんなにも可哀そうなエリを見放せって……そんな冷たいこと言うの?」
腕を掴む手にぎゅっと力が込められてリアの必死さが伝わってきた。絵里は出会ったばかりの自分にここまでしてくれるリアの優しさに喜びを感じながらも「もういいのよ」と彼女の手に自分の手を添えた。そして父親に謝り荷物をまとめ出て行くと告げようとしたその時。
「勝手にしなさい」
父親はため息交じりにそう告げるとリビングを出て行った。
勝手にしなさい、それはつまり絵里がこの家に滞在するということを認めたということだろう。再び唖然とする絵里にリアは満面の笑みでウィンクをした。