Beautiful Life ?
リアお手製の食事をいただいたあと、ゲストルームのベッドで絵里の日本での生活のことやリアの恋愛話をしているうちにリアが眠ってしまった。
絵里は安らかな寝息を立てるリアの隣で横になって天井を見つめるが、夕方に仮眠をとってしまったせいか眠ることが出来ない。
ノドの渇きを感じて部屋を出てキッチンに向かう。そこでばったりと風呂上りのリアの父親と鉢合わせる。父親は絵里と目を合わせると柔らかな表情を見せた。先ほどリアの前で見せていた説教をする固い父親の顔とは違う柔らかなその表情にエリは少しの驚きを感じて立ちすくんだ。
「枕が変わって眠れないんだろう」
「え……?」
絵里は思わず目を丸くする。この日、この地ではじめて聞いた日本語だったからだ。
「あ、あの。急にごめんなさい……私も正直自分の行動に驚いていて……」
「ニューヨークへは観光で?」
「え?」
「さっきリアが言ってたことは全部嘘だろう。まったく、あの強引な性格は誰に似たのか……どうせリアが君に興味を持って無理やり連れてきたんだろう?」
「えっと」
さすが父親といったところだろう。リアの嘘も行動もすべてお見通しのようだ。
「さすがね。すべてお見通しのようね」
日本語での会話に不思議と肩の力が抜けてやんわりと自然な笑顔がもれた。
女一人での海外旅行。楽しんではいたが、今日一日、自然と肩に力が入りっぱなしだったようだ。
「ご飯の時リアから紹介してもらったけど改めまして。私は小坂エリ。今日から一週間、観光でニューヨークへ来たの」
「辻合(つじあい)です」
簡単な自己紹介をして互いに笑みを見せる。
辻合は15になる娘がいる父親だが外見は若い。絵里は同年代の男性と会話をするようにリラックスしていた。
「ねぇ、歳を聞いてもいい?」
「36だ」
「わぁ、若いのね」
「もしかして年上?」
「失礼な! 33よ! ……じゃない。33です」
辻合は「冗談だよ」と言うと冷蔵庫から取り出したワインを手に「少し飲まない?」と言った。
「あと敬語はいいよ。この国じゃ敬語もなにもないからね」
眠れず暇を持て余していた絵里は笑顔で頷く。
「それと」
「え?」
「あの」
急に歯切れが悪くなる辻合に絵里は首をかしげる。
「さっきは……すまなかった」
「なんのこと?」
絵里は辻合が何に対して謝罪をしているのか分かってわざととぼけて見せた。バスルームでの一件についてだろう。
出会う前から初対面と、固いイメージのあった辻合が微かに頬を染めている姿が可愛らしく見えて咄嗟に意地悪をしてしまったのだ。
からかわれているとすぐに悟った辻合は眉をひそめる。
「君は、なかなかいい性格をしているみたいだな」
「あれ? バレてる?」
手を合わせて「ごめんなさい」と謝る絵里の明るい笑顔につられるように辻合の表情も和らいだ。
絵里は安らかな寝息を立てるリアの隣で横になって天井を見つめるが、夕方に仮眠をとってしまったせいか眠ることが出来ない。
ノドの渇きを感じて部屋を出てキッチンに向かう。そこでばったりと風呂上りのリアの父親と鉢合わせる。父親は絵里と目を合わせると柔らかな表情を見せた。先ほどリアの前で見せていた説教をする固い父親の顔とは違う柔らかなその表情にエリは少しの驚きを感じて立ちすくんだ。
「枕が変わって眠れないんだろう」
「え……?」
絵里は思わず目を丸くする。この日、この地ではじめて聞いた日本語だったからだ。
「あ、あの。急にごめんなさい……私も正直自分の行動に驚いていて……」
「ニューヨークへは観光で?」
「え?」
「さっきリアが言ってたことは全部嘘だろう。まったく、あの強引な性格は誰に似たのか……どうせリアが君に興味を持って無理やり連れてきたんだろう?」
「えっと」
さすが父親といったところだろう。リアの嘘も行動もすべてお見通しのようだ。
「さすがね。すべてお見通しのようね」
日本語での会話に不思議と肩の力が抜けてやんわりと自然な笑顔がもれた。
女一人での海外旅行。楽しんではいたが、今日一日、自然と肩に力が入りっぱなしだったようだ。
「ご飯の時リアから紹介してもらったけど改めまして。私は小坂エリ。今日から一週間、観光でニューヨークへ来たの」
「辻合(つじあい)です」
簡単な自己紹介をして互いに笑みを見せる。
辻合は15になる娘がいる父親だが外見は若い。絵里は同年代の男性と会話をするようにリラックスしていた。
「ねぇ、歳を聞いてもいい?」
「36だ」
「わぁ、若いのね」
「もしかして年上?」
「失礼な! 33よ! ……じゃない。33です」
辻合は「冗談だよ」と言うと冷蔵庫から取り出したワインを手に「少し飲まない?」と言った。
「あと敬語はいいよ。この国じゃ敬語もなにもないからね」
眠れず暇を持て余していた絵里は笑顔で頷く。
「それと」
「え?」
「あの」
急に歯切れが悪くなる辻合に絵里は首をかしげる。
「さっきは……すまなかった」
「なんのこと?」
絵里は辻合が何に対して謝罪をしているのか分かってわざととぼけて見せた。バスルームでの一件についてだろう。
出会う前から初対面と、固いイメージのあった辻合が微かに頬を染めている姿が可愛らしく見えて咄嗟に意地悪をしてしまったのだ。
からかわれているとすぐに悟った辻合は眉をひそめる。
「君は、なかなかいい性格をしているみたいだな」
「あれ? バレてる?」
手を合わせて「ごめんなさい」と謝る絵里の明るい笑顔につられるように辻合の表情も和らいだ。