龍神のとりこ
「怖いか?」

トーコは一瞬ためらった。
「あたしは、、、何も覚えていなくて。。」
龍神、というのが怖いのかどうか、どうやって暮らしていたかも
思い出せなくて、感覚が鈍いようだった。

コハクがふっと笑った。
「おもしろいやつだな。」

「どうして、、巫女じゃないってわかるの?」
いつの間にか、コハクは服を着ていた。
龍神とは特別なのだろうか?

トーコはなんとなく、彼が固まっていたはずの場所を振り返った。
そこには何もなかった。確かに、このコハクが石像だったはずの
男らしかった。

コハクは立ち上がったトーコから手を離し、
辺りをざっと見渡していた。
「巫女なら俺に力を与えることができる。だがお前からは・・」
「力?どうやって?」

コハクの大きな手がトーコの腕を掴んで引き寄せた。
「交わればいい。」
コハクの胸に抱きしめられ、見上げると男の端正な顔がすぐ近くにあった。
見下ろされて、くちびるが近い。

あ、っと思い出す。
熱く激しいくちづけを。

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