龍神のとりこ
着いたのは、樹々の生い茂る、深い森の入り口だった。

コハクはトーコを片手で脇に抱え、森へ飛び込んだ。
「シオウの気配がまだ近い。あまり遠くへは飛べなかったらしい。すまない。」

トーコがぶんぶんと顔を振る。
ぎゅっとコハクの身体を掴む手に力が入った。


けれど、コハクが飛ぶように森を突き進むので、トーコは舌を噛まないように口を閉じているしかなかった。
景色は濃い緑と黒のように移り、飛び去っていく。

『少しでも遠くへ、、トーコを守らなければ、、』




コハクは両腕でトーコを抱え直した。







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