龍神のとりこ
そっとやわらかそうな髪に指を通した。

さっきからまた遠吠えが聞こえている。


コハクは視線を暗闇に戻した。

自分たちの周りに張った結界に更に気を送ると、遠吠えが止んだ。

これがなければトーコは森の獣たちにすぐやられてしまうだろう。人間は脆い。




結界の内側だけ、暖気が満ちている。
トーコは夜露の寒さも感じず、すやすやと眠るようだった。
その寝息がコハクには不思議と心地よかった。


誰かと居るとは、気持ちが緩くなることなのだろうか。

眠るトーコにコハクは自分のマントをそっと掛けた。



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