龍神のとりこ
「喰われたくなければ、俺のそばを離れるな。」

そう言った後、困惑するトーコにコハクがまず見せたのは自身の瞳だった。

瞳は薄い緑から紅に変わった。
『龍神の瞳』だと言う。
何度か見た紅い瞳をトーコも覚えている。

初めて出会った時、あの時もこの紅い瞳に襲われて激しくくちびるを、、

トーコはどぎまぎする思いを頭の端に追いやった。


紅い瞳は出会った時よりも紅が濃くなっていた。

瞳が濃くなっているのは以前より力が戻ってきている証だとコハクは言った。

そして、その力が戻ってきたことにトーコが関係していると。

「あたしにそんな力はないわ、、。」
目を丸めるしかなかった。

コハクはゆっくり首を振った。

「トーコ、俺の力は戻りつつある。巫女ではないと言ったが、お前は俺のそばにいるからかもしれないが、」

トーコの顔が曇った。
「どういうこと?」

自分のくちびるに指を当てて見せる。
「トーコにくちづけする度、力が戻ってきている。それは巫女と同じ力だ。何か特別な力がお前の中で芽生えてきているのかもしれない。」


真紅の瞳が熱っぽくトーコを見つめている。
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