龍神のとりこ
『守ってやる。そばにいろ。』
って言ったじゃない。。

リスだって、言ったじゃない。。


『巫女じゃないけど、特別な力が生まれ始めたようだ。』
そんな力、いらない。

試すといって何度かくちづけをされたのはそのためだったの?

そういえば、、たまに口づけはするかもとは言っていた。
何かにつけて軽くくちづけはされていたような。。

でも、初めから『巫女じゃない』とはっきり言ってた。

あれは?  あれが嘘だったの?

でも、巫女なら完全に喰われているのかもで、、
喰われる、とんでもない想像をして体温が一気に上昇した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

丸まって頑として応えない布の塊。
コハクはひとつ息をついてから、その塊が夜の寒さに当てられないよう
暖かな気で覆うことにした。

何を言っても頑としてたき火に近づこうとしない。
俺が居るほうへ来るのが嫌だとあからさまに、この数日俺を避けている。


トーコのくちづけで龍神の気が戻ってくる、そんなこと思いもしなかった。

『そんなつもりではなかった』といくら言ってもわかってもらえないだろう。
またひとつ、ため息が漏れてしまった。

彼女の瞳はひどく俺を拒否している。

喰わない、と言っていたのに、結果、彼女の気を喰って
龍神の力を取り戻していたからだろうか?

こんな小さな少女の表情ひとつに心がかき乱されている。

どうしたらまた笑顔を見せてくれるのだろうーーーー。




ぱち、、大きく火の粉がはねた。


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