龍神のとりこ
目の前に軽く上げていた手のひらが
裂けそうなほど力いっぱい開かれる。


シオウの目の前の空間が歪む。

「見つけた。」


シオウがそう言うと、その歪みの中にコハクの姿が浮かびだした。

シオウの唇が何かをつぶやいた。部屋が小さく揺れた。


「コハク、俺の前に現れるなといったろう。。」

シオウの紅い瞳が刺すほどに見つめている。


その瞳を受け、コハクはすべて理解した。

「そうか、俺を呼びたくて気配を探っていたのか」

コハクの傍には彼のマントを掴んだトーコも一緒にいた。

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