龍神のとりこ
コハクがぐっとトーコをマントの中に引き寄せ、片手で抱き込む。


口元に出かかっていた叫びはコハクの胸に吸収された。

ぎゅっとトーコの身体が固くなるのがわかる。

『トーコを守らなければ。』




「その女も、俺に喰われに来たか。」

ゴロゴロと部屋中に響く音がトーコを怯えさせる。

「気にするな、爺さんだから腹の調子が悪いんだ。」
耳元でささやいた。


「またホザいたか、小僧。」

瞬間、ぱらぱらとコハクたちの頭上の壁が小さく崩れた。
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