あなたのヒロインではないけれど



「それも仕方ないよ。生徒会長の有馬さんは、美人な上に性格もよくて文武両道。おまけに有馬総合病院のご令嬢でしょう。入り婿になれば将来安泰だものね」


お姉ちゃんが言った有馬さんは……ゆみ先輩のことだ。


思わぬ場所でゆみ先輩のことを聞き、鼓動が早鐘のように鳴る。

聞きたくない……でも、聞きたい。


氷上さんとゆみ先輩に何があったか。情報の断片でもあったら……。


「へえ、有馬がそんなお嬢様だったのは知らなかったな。オレが聞いたのは、彼女がアメリカへ渡ったのは留学というのはあくまで表向きで、実際には別の理由があったってことだな」

「え~そうなん? それ、やっぱ葉月さん情報?」

「そりゃな。詳しくは教えてくれなかったが、相当な理由だってのは察せた。総合病院の跡継ぎ娘が単身アメリカへ渡ったんだからな。親だって納得しないだろ」


お兄ちゃんが真面目な顔で話した内容を、頭の中で何度も反芻する。


(重大な理由……ゆみ先輩に何があったんだろう? 単なる留学じゃなかったなら……皐月先輩がついていったのは……)


もしも、だけど。


ゆみ先輩は……幼なじみには日本に残って欲しかったのかもしれない。


それを、皐月先輩が強引にというか無理やり着いて行ったのだとしたら。


(でも……今、ゆみ先輩は氷上さんと婚約してる。なら……過去にいろいろと障害があったとしても、今二人は幸せ……なんだよね?)


「ごちそうさまでした……」


堪えきる自信がなくて、食べかけの食器を持って流しに急ぐ。水を思いっきり流しながら、溢れそうなものを洗い流した。


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