あなたのヒロインではないけれど
「あの……その、す、素敵なストラップですね」
「ああ、これですか?」
氷上さんはスマホにぶら下がっていた、動物のストラップを手のひらに載せる。
「これ、手作りなんですよ。変わった動物でしょう?世界で1つだけの……とても思い出深いものでして。なくさないように気をつけてます」
「……そ、そうなんですか」
それが手作り、ということを知っている人は少ない。いいえ……私と、他には2人しかいないはず。
「あの……」
私が更にそのストラップについて訊こうとした時。突然、後ろから声が聞こえた。
「あの! よかったらうちの商品見てみません?」
「え?」
「この子……結実、実はハンドメイドの作品作ってるんですよ。ストラップなんかもいくつかありますから~覗くだけでもいかがですか?」
戸惑う氷上さんに構わず、真湖は畳み掛けるように話を進めた。
だけど……。
「……結実?」
なぜか、私の名前を呟いた氷上さんが一瞬。ひどく悲しげな顔をしたから。私は何も言えなくなって。真湖の強引な押しにあれよあれよという間に、二人で展示してる作品の前に連れて来られるはめになってた。