あなたのヒロインではないけれど




「そうですね……作った方がとても素直で愛情溢れる方だ、ということがよく伝わってきます」

「え……」


氷上さんから思いがけない言葉を貰い、私は彼を見上げた。


女性として高めの真湖より、更に10センチ以上の長身であろう彼は。私を見て微笑み掛けてくれて、心臓が口から飛び出すかと思えて慌てて両手で押さえた。


顔に、熱が集まる。酸素不足のように呼吸が苦しくて、短く息を吐いた。


「ですよね? 結実なら何にでも一生懸命になりますよ。責任感も強いし、見た目はかわいいだけですが根性もありますし、頼りになります」


(真湖! いくらなんでも売り込み過ぎだから)


後で覚えてなさいよ! と。恥ずかしさと、慣れないときめきに顔をあげられない。意味もなく陳列を変えていると、氷上さんが意外な言葉を呟いた。


「……使えるかもしれない」

「え? 何がですか」


真湖も不思議に思ったのか、氷上さんの次の言葉を待っている。そして、氷上さんが意外な提案をしてきた。


「……唐突ですが……結実さん、もしもよろしければ。私どものお手伝いをしていただけませんでしょうか?」

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