あなたのヒロインではないけれど



そもそも、始まりは7月に水族館を訪れた帰り。駅のロータリーでキャンディが車に轢かれたことがきっかけになる。


キャンディを轢いたタクシーで動物病院に行き、入院したキャンディを引き取ると申し出たのが氷上さんで。彼は、これから多忙になるし猫の世話は慣れないから……と私に協力を頼んできた。


私も動物好きではあったけれど、お父さんが猫アレルギーということもあって、動物の飼育経験はほとんどない。とはいえ、小さな体で一生懸命生きてるキャンディを見放すなんてできなくて。私にも出来ることがあれば……と承知してしまった。


でも、確かに退院した後のキャンディは一人でお世話するには厳しいと言えた。


まだ子猫な上に折れた足を固定しているから、マトモに歩けない。私より遥かに仕事を抱えて多忙な氷上さんに、そんな状態の子猫をお世話することは不可能。


他に頼もうとしても頼れる人は見つからず、やむなく私に頼ったという経緯があったようで。

そんな事情があって頼られたなら、断るなんて非情なことなど出来るわけもなかった。


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