あなたのヒロインではないけれど
「おほほのほ、もちろん! 喜んでお手伝いさせていただきますわ~」
一時姿を消していた真湖が、なぜか勝手に答えを返した。
「店長も、“いい勉強になるから”って言ってくれましたし。よかったら派遣扱いにするそうですよ」
「ま、真湖! いつの間に」
私が焦って止めようとしても、親友はゴーイングマイウェイに話を纏めた。
「結実、あんたもスキルアップすべきだよ。昔からデザインを学びたいって言ってたじゃん。このチャンスを活かさずにどうするの?」
「そう……だけど」
「それにさ……店長から聞いたけど。氷上さん、結構エリートっぽいんだって。だから~今のうちに捕まえておかなきゃね!」
私を思いやってくれる気持ちに胸が打たれた途端にこれだ。やっぱり真湖は真湖だった。
それにしても……一体いつの間にそこまで話を纏めてきたんですか!
「いいえ、派遣など大げさにしなくとも。ただ、お暇な時間に少々お付き合い下されば」
氷上さんが微苦笑しているのも当然だよね。真湖や店長の押しの強さに、穴があったら入りたいくらいの羞恥心が起きる。
「あらら~それでしたらますます喜んで! 結実をお貸し致しますわ」
真湖は満面の笑みで答えるけど、私の意志は一体どこに!?