あなたのヒロインではないけれど
「ふぉっ、ふおっ。結実ちゃん、元気じゃったかね?」
「よ、洋介おじいちゃん!?」
午後3時過ぎ。
仕事場となった会議室で、突然ドアが開いたかと思うと。洋介おじいちゃんが姿を現した。
相変わらずお洒落でシックなファッションに身を包んでるけど。
「ど、どうしておじいちゃんがここに?」
急いでおじいちゃんの元に駆け寄り、イスに座るお手伝いをする。 洋介おじいちゃんはありがとう、と言うと私が淹れたお茶を手に息を吐く。
「結実ちゃんが頑張るだろうことは知っとるが、周りがどうかと気になってのぅ。余計なお節介じゃが、様子を見に来たんじゃ」
「で、でも。私は一度もSS社のことを話したことはないのに……どうして」
私が不思議に思って首を傾げると、なぜか仲田さんが額に指を当てる。あれ? 困らせた?
「……鵜野さん……まぁ、あなたはここの社員じゃないから仕方ないけどね」
「え、と……どういうことですか?」
本気でわからなくて訊ねかけた時。ドアがもう一度派手に開いて飛び込んできたのは……企画部の部長。
そして、彼はこう叫んだ。
「ここにいらっしゃいましたか、皐月会長! お探ししましたよ。あまりあちこち歩き回らないでください。SPが右往左往してましたよ」
……私がその場で固まったのは言うまでもありませんでした。