あなたのヒロインではないけれど
第1話~ぬいぐるみと決心
「こら、なにしてんだ!!」
「やべ、逃げろ!」
大きな怒鳴り声が聞こえた途端、私を囲んでいた男の子達は蜘蛛の子を散らすように走って逃げた。
「ありゃ1年だな。ったく、ガキはすぐいじめたがる」
「バカね、たかあきったら。自分だってガキじゃない。……大丈夫? ケガとかしてない?」
ふわり、といい匂いがした。
公園の地面にうずくまってた私は、恐る恐る顔を上げて……すごく綺麗な顔に息を飲んだ。
もう暮れようとしている夕日を背にしているその女の子は、今まで見た事がないくらいに整っていて。お人形のように肌が白くて。さらさらの艶やかな黒髪が風に揺れてる。彼女はぼんやり見上げるだけの私を安心させるように笑った。
「どこか痛いところはない? あら、こんなに服もお肌も汚れちゃって……よかったらうちに来て、汚れを落とそっか? このまま帰ったらお家の人を心配させちゃうよ」
お母さんやお父さんやお兄ちゃんやお姉ちゃんを心配させる……。それは一番したくないことだったから、躊躇いはあったけど。私は不安になって彼女を見上げ、コクンと頷いた。
見知らぬ初対面の女の子にお世話になるよりも、家族を心配させ悲しませるのが嫌だったから。