あなたのヒロインではないけれど
だけど、そのまま公園から離れるのはやっぱり嫌だった。
「どうしたの?」
私が草むらに目を向けていると、不思議に思ったのか女の子は訊いてきた。
「なにか、なくしちゃったの?」
「……………」
その頃から人見知りで内気だった私は、自分の言葉を出すのが不得手で。幾ら訊かれたり促されても、言えないことが多かった。だからか、よくクラスの男子にからかわれていて。
さっきだって、私の持っていたもので軽く意地悪をされていたんだ。
“なんだこれ、ぶさいくだな”
“ほんと、全然生き物に見えないよ”
“新しいモンスターじゃね?”
生まれて初めて一生懸命作ったものが否定されて、傷ついていた私は。それを見られたらまたからかわれるんじゃないか……そんな恐れがあって。自分から言えずに、ただ首を横に振るしかなかった。
「荷物はこれだけ? じゃ、あたしん家にいきましょ」
女の子はランドセルとバッグを持つと、私の手を引いてすぐ近くにあるお家に招き入れてくれた。
様々な花が咲き誇るヨーロピアンガーデンのお庭に、広い芝生がある空間。真っ白な壁のお屋敷に、おっかなびっくりした。