あなたのヒロインではないけれど
「ゆ…み……ゆ…み」
あなたが呼ぶ声は、これほどまでに甘くて情熱的。
与えられる痛みも、熱も、ぬくもりも。 永遠に知るはずがなかったもの。
だけど――
今、私はこうしてあなたのそばにいる。
決して許されることでないとはわかってる。
だって――私はあなたが切なくいとおしそうに呼ぶ、その女性ではないから。
たった一文字違うだけなのに、あのひとはあなたのすべてを手に入れてる。
人生も、身も心も。
私には、何もないのに。
心が焼け焦がれるほどの想いを抱えていても。誰にも負けないほど好きでも。
だから……だから。
ただの身代わり、勘違いでいい。
この一時……今夜は。今夜だけは。
あなたの身体だけでも、私にください。
それだけで、私は二度とあなたに会わないから。
今だけは――。