あなたのヒロインではないけれど
さすがにこの時間にご飯を作るのは大変だから、帰り道にあるコンビニでサンドイッチとサラダを調達する。帰宅した私を出迎えてくれるのは……たくさんのぬいぐるみ。
本当はペットを飼いたいけれど、寮である以上は我慢するしかない。だから、それを紛らわせるようにぬいぐるみを作っているうちに、すごい数が出来てしまった。
他の社員さんやアルバイトちゃんや近所の人たちに譲ってはいるものの。最近また凝ってるからな……と苦笑い。
「ただいま、クマちゃん」
ベッドの上に座る薄汚れた……一番不恰好なクマのぬいぐるみに挨拶をして、すぐにそれを抱き上げた。
泥の中から助けられたあのクマのぬいぐるみ……。
あの時からずっと、今まで一緒にいた。どれだけ辛くても苦しくても、このぬいぐるみを抱きしめると落ち着くことが出来たんだ。
引っ越しする時も、どうしてもこれだけは手放せなかった。