あなたのヒロインではないけれど



「たかあき、ホントバカね。あんただって男でしょ。自分をバカで単純なガキって言ってるようなもんでしょ」


女の子が呆れたようにため息を着くと、たかあきくんは「何だよう!」と怒った。

「ぼくは違うぞ! バカで単純なんかじゃないやい」

「そうやってすぐカッとなるのが単純なんでしょ。ホント、バカなんだから」

「なんだよ! バカ! バカって言う方がバカなんだからな!!」

「バカって言う方がバカって言いながら、バカって言う。意味不明で支離滅裂じゃん」

「な……な! ゆみの方がバカだろ! バカバカバカバカ!!」


ポンポンと軽快なやり取りの末に、たかあきくんが地団駄を踏んで悔しがってる。その様子に、不謹慎ながらも笑ってしまって。気付いた二人はパッと顔を明るくした。


「よかった~やっと笑ってくれた! それ、とっても大切なものなんでしょう?」

「……うん」


やっと素直に頷けた。泥まみれでギュッと抱きしめられなかったけど、タオルでくるまれたクマのぬいぐるみは、私にとってとても大切なものだった。


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