あなたのヒロインではないけれど
第2話~スケッチブックと初めてのデート?
手が、震える。
鏡に映った自分を睨みつけながら、手にした尖ったものを自分へと向けた。
慎重に……慎重に。
そう言い聞かせながら、そっと目の上にその道具を宛ててみる。
(いよいよこれで……私も)
高揚する気持ちを抑えながら、それをそっと横に滑らそうとした刹那――。
手が、滑った。
「あたたっ!ま、まぶたに刺さった!」
――初めてのアイプチ……自力で二重まぶたを作る試みは失敗しました……。
「……で、結局今朝もお姉さんの角を見ながら、メイクをいたしていただいた……と」
「……はい」
雑貨店“ミラージュ”で、遅刻寸前だった私に呆れた目を向けてきたのは真湖。
今日も今日とて彼女はしっかりとメイクをしてる。栗色のショートカットはヘアアイロンでしっかりセットされ、制服である緑色のエプロンの下はダメージジーンズと白い開襟シャツ。それとスニーカー。そんなさっぱりした親友だけど、カレの為に常に綺麗でいたいと高校の頃からお洒落の研究に余念はなかったから。私なんかよりよほど女性らしい。
「……って言うか、アイプチで二重かぁ。悪くはないけどさ、慣れないうちは難しいっしょ? 100均にもアイテープあったりするから、それも使ってみたら?」
「アイテープ?」
初めて耳にする言葉に目を瞬くと、真湖はやれやれと肩を竦める。
「知らないの? 100均って案外リーズナブルでいいもの揃ってるんだよ。肌に合うならいろんなコスメも揃うしさ、一度覗いて。ちゃんとしたメイク用品使う前に100均ので練習してみたら?」