あなたのヒロインではないけれど






「へぇ、店長がそんなに評価をくれるなんて珍しいね」


お昼のランチ。併設する小さなカフェで、賄いのランチを食べてる時に真湖はそう言ってくれた。


基本的にミラージュは雑貨店にカフェを併設してる。そこをディスプレイするのは当然売ってる商品で、滞在時間を伸ばし購買意欲を上げる目的もあったり。


大好きな雑貨をゆっくり見られるし、食事もそこで安く済ませられるから、私にとっては一石二鳥。


差し向かいでカルボナーラを食べる真湖に、私は笑顔で頷いた。やっぱり認められるって嬉しいし、幸せな気持ちになる。


「よかったじゃん! あんたこのところクマ作るくらい寝てなかったみたいだから、なんか悩みでもあったかと心配したけどさ。作品作りのためだったか~よかった、よかった」


バンッ! と背中を叩かれて、サンドイッチをぐっと喉に詰まらせそうになった。


(真湖……やっぱり私が寝れてなかったの気付いたんだ)


そうやって些細な変化を気にかけてくれる親友の存在がありがたくて、じんわりと胸があたたかくなった。


「ありがとう、真湖。心配かけてごめんね」

「うん、うん。うちら友達だから遠慮すんなって! それよかクマが目立つから、とりあえずコンシーラーで隠しなよ。貸したげるし手伝ってあげるからさ」

「う……」


メイクは苦手で最低限しかしてないけど、お客の前でみっともない顔は晒せないよね。と真湖の不穏なニヤニヤ笑いを見ながらしぶしぶ頷いたけど。


30分後。案の定、激しく後悔することになってしまいましたよ……。


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