あなたのヒロインではないけれど
氷上さんが主任の地位を望んでる……そのためにはクリスマス商戦で勝てる商品が必要。
なら、私はそのお手伝いをしよう。
主任になれば、晴れて“ゆみ先輩”と結婚する決意をしているのかもしれない。出世で安定した地位を手に入れてからだと。
でも……それでもいい。
どうせ私は最初から望みはないと諦めてる。なら、せめて大好きな人がしあわせになれるお手伝いをしよう。彼がしあわせになって笑えたら、きっと私もしあわせになれるはず……。
「今はまだ、具体的なアイデアはありませんけど。今日の動物園で幾つか案は出ました……だから。よろしく……お願いします」
自分でも驚くほど、すらすらと言葉が出た。いつもはつっかえつっかえ、相手をイライラさせるのに。今は、決意が固まってすべきことが見えてきたから。
「……合格。思ったより根性ありそうで安心したわ」
ニッ、と笑った仲田さんはシガレットチョコレートを一本プレゼントしてくれた。
「ただし、甘くないことは覚悟なさい。案を100出しても一つも通らないことも珍しくないし、途中で発売中止なんてこともしょっちゅうよ」
「はい、わかりました……ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。これから1年……私は大好きな人のために頑張ろう。どれだけ悲しくても辛くても……彼のしあわせのために――。