あなたのヒロインではないけれど
(バレンタインのチョコレート……か)
一応、考えてはいたけど。真湖に言った通りに、お父さんとお兄ちゃんに義理チョコ。真湖に友チョコ。お母さんとお姉ちゃんと職場の皆に感謝チョコを渡すくらいだった。
真湖に指摘されるまで気づかなかった。次に氷上さん達と会う約束をした日はバレンタインだって。
(大変……真湖のアドバイス通りにちゃんと用意しないと。これからの挨拶の意味も込めて)
仕事の帰り道。真湖はカレと待ち合わせというから、一人でスーパーにやって来た。
二階建ての馴染みのあるスーパーは一階に食品売り場と催事場があって、今のお目当ては二階の100均と一階の催事場にあるバレンタインフェア。先ずは100均でラッピング用の袋を買ってから、エスカレーターを使って一階に降りた時。意外な人にばったりと会った。
「ユーミじゃないデスか! 奇遇デスネ!」
エスカレーター向かって歩いていたらしいネイサンさんが、私に向かって大きく手を振ってきたから。ペコリと頭を下げる。
「ど……どうも。お久しぶりです」
「偶然ダネ! ボクはビジネスだけど、ユーミは買い物?」
「あ……は、はい」
ネイサンさんは気さくに話しかけてくれるけど。ブロンドでモデル並みに美形な外人さんは、中途半端に田舎なここでは目立つんです。
ほら、老若男女問わずみんなの目が集まってるし。 知り合いがいるかもしれないから、恥ずかしくて早く立ち去りたかった。