あなたのヒロインではないけれど
だけど、ネイサンさんは遠慮することもなく。私の催事場行きにぴったり着いてきてしまいました……。
“ニホンのエキサイティングなバレンタインは初めてデスから興味アリマス。ビジネスの役に立つデショウ”なんて言われては断れないし。
それに、と私はちょっぴり期待する気持ちがあった。
SS社の知り合った皆さんにチョコレートを贈るために、好みや苦手なものを把握しておきたい。だから、同僚であるネイサンさんにアドバイスをいただけたら……なんて。ちょっと打算的かな?
「WAO.なかなか面白いネ! 日本酒のボンボンもあるなんて……薬に似たパッケージや、インスタントラーメンにカレー……アレはお刺身? あんなのもアルンだね」
ネイサンさんは眺めてるだけでわくわくしたようで、いちいち大げさな歓声を上げるから注目を集めてしまう。恥ずかしく俯きながら、彼から離れようとしたところで。がっしりと腕を掴まれた。
「見てよ、ユーミ! ユニークなものばかりじゃなくて、あんな繊細でBeautifulなチョコレートもアルンだね。まさにワンダフルだよ」
「は……はい、あの」
「ああ、Sorry.ユーミも見たいんだよね? 誰に贈りたいのかな。ボクで良ければアドバイスするよ」
まさか、ネイサンさんから申し出てくれるなんて……とありがたく思いながら、お礼を言うために彼を見上げた瞬間。
彼は、何とも言えない顔をしてこう言った。
「……タカアキにも?」