男装少女争・奪・戦 ~男子校とか無理だから!!~ 【完】
「さっきはすまなかったな」

歩いているとふいに鹿島先輩が俺に謝った。

ふぇ?

「何がですか?」

謝られることなんて

されてないけど……

「話を勝手に聞いてしまっただろう?」

「え! そんなの鹿島先輩が謝ることじゃありませんよ!」

偶然聞いちゃっただけだろうし……

それに秘密にしといてくれるなんて

「しかし……」

「誰にも言われないなら全然!」

「疑わないのか?」

疑う?

「俺鹿島先輩信用してますし」

「だからと言って俺が言いふらさないとは限らない」

「言いふらすんですか?」

「さあな」

自分から言っといてさあなはないんじゃないでしょうか?

「今は言いふらそうとは思っていないがこの先何があるかはわからないからな。
もしかしたらその秘密を俺が利用するかもしれない」

「何かあった時に…ですか?」

「ああ」

「うーん
あ! でもそしたら俺のせいですし」

「君のせい?」

「はい
鹿島先輩を信用するって決めたのは俺なので」

「……そうか」

微笑を浮かべる鹿島先輩

だけどその微笑はどこか悲しそうに見える。

「鹿島先輩?」

「……すまない」

「さっきのことは全然気にしてないって言いましたよね?」

「そのことではないんだ」

へ?

さっきのことじゃなくても謝られるようなことされてない……

俺が謝ることはたくさん見つかるけど……

「誘導するようなことを言ってしまったから…な」

「誘導?」

「そうだ
うまくいけば聞いてくるかと思ったんだ
交換条件に、と」

「聞くって何を……」

「俺の秘密……というほど大仰なものではないが……」

鹿島先輩の秘密?

それは

聞きたいとは思うけどね

力になれたらとか

でも秘密は秘密でしょ

俺なんかが探るのはよくないし

「じゃあ……教えてもらってもいいんですか?」

「むしろ俺が聞いてもらいたいんだ」

鹿島先輩が自分の『欲求』を口に出すなんて……

俺が秘密を人に聞いてもらいたい時って

どんな時だろう

その秘密が、自慢になることだった時

ただ単に、仲間意識を持ちたかった時

いろいろあると思う

俺だったら

その秘密が

一人で抱えるには辛すぎる時とか、大変な時

鹿島先輩は

どうなんだろう?

「鹿島先輩
あそこに座って話しませんか」

俺は近くのベンチを指差す。

鹿島先輩が頷いたのを確認してから俺はベンチに腰かけた。












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